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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~パート2」 第三十三話

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美穂の世界史は紀元前から紀元に入っていた。
まとめとして次のように話し始めた。

「AD元年頃、世界の人口は二億人に近づいていたと推測される。紀元前に隆盛を誇っていたローマと漢の二大帝国は衰亡し、ユーラシアの寒冷化と、それに伴う諸部族の大移動が始まった。北から南へと移動する遊牧民は玉突き現象を起こし、ユーラシア大陸全般を巻き込む巨大な民族移動となるの。東では中国が南へ逃げ、北部には遊牧民の国家が幾つも生まれた。その中で抜け出した拓跋部(たくばつぶ)が中国の北部を統一。その後南へと支配を伸ばし、隋や唐を建国したの。
西ではローマ帝国が東に逃れて、今のフランスとドイツ西部を含む地域にフランク王国が誕生し、その後ヨーロッパを左右する存在となるの。
一方で民族移動の影響を比較的受けなかったインドとペルシャには新たな帝国が生まれる。この時期キリスト教が生まれて広がりを見せる。大乗仏教も生まれて、庶民に浸透してゆくの」

「キリスト教の誕生について知りたいです」

「そうね、世界史はキリスト教を知らないと解らないとも言えるから、話さないといけないわね。
旧約聖書を完成させてユダヤ人のアイデンティティを確保したのがユダヤ教だったんだけど、時代を経るにつれて、教義の乱れと聖職者の堕落が始まるの。どのような宗教でも、自分の宗派が発展してくると、綺麗な法衣を着たり、美味しいものを食べたくなるというもの。イエスはそれを非難してユダヤ教の改革運動を始めたという訳。従ってユダヤ教とキリスト教の神様は同じなの。
しかし、イエスは32歳前後でエルサレムにて刑死する。そこで、パウロがキリスト教の衣鉢(いはつ=師から弟子に授けられる奥義)を継ぐことになるの。パウロはもともとキリスト教を迫害していた人だったんだけど、天からイエスの声が聞こえて回心したと伝わっている。
エルサレムに戻ったパウロはイエスの弟ヤコブを始めとする人々がイエスの教えを守って暮らしていたので、迫害者のパウロを受け入れなかった。その頃バビロン捕囚から解放されたユダヤ人は、商業に従事していたの。パウロは生まれ故郷であるアナトリア半島西部や、エーゲ海周辺の都市に住むユダヤ人の共同体を巡り歩いて、イエスの教えを説くようになる。
彼は教えを広げるため、ギリシャ人でも受け入れ、イエスの教えは誰にでも開かれていると迎え入れるの。そしてパウロはコイネー(ギリシャ語)で説教し、共感を得るようになってゆく。
一方、エルサレムでユダヤ人に説教していた人々は、アラム語を使っていた。イエスが話していたのと同じ言葉ね。パウロとヤコブの関係は緊張していたんだけど、結局パウロが民族を問わず布教したことで、キリスト教は世界宗教になる素地を得たというわけ」

「パウロはイエスから直接教義を受けた訳ではなかったのですよね?なのに彼がこれほどの布教が出来たのはどうしてでしょう?」