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陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

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プロローグ


 
 これは僕が先輩達と別れてからの物語り。

 大げさに聞こえるかもしれないけど、僕達は人類の命運をかけて戦った。
 言った所で誰も信じてくれないだろう、でも僕は忘れる事は無い、時を越えて行われた希望と絶望、光と闇、陰と陽の戦いの事を……

「まずい、完全に遅刻だよ」
 道路をスクーターで走りながら僕は腕時計を見て顔を顰めた。
 昨日は夜遅くまでレポートを纏めていたからだ。夢の為とは言え凄く大変だ。
 だけど僕はまだマシな方かもしれない、なにしろ僕の知る先輩なんか多忙なんてモンじゃ無かったからだ。
 僕や数人の仲間達も一緒に戦う事になったのだけど、あの人は受験にバイトに戦いと言う、言わば三重生活を送っていた。
 あの人は本当の意味で強い人だった。そりゃ人間だからダラしない一面もあったけど、なんやかんやで人類の運命を救ったと言っても過言じゃ無い。
 だけどその為に愛する人が目の前からいなくなってしばらくは塞ぎこんでいた。
あれから僕は預かって貰っている犬の『ライブ』の世話をすると同時に先輩の様子を見に行っていた。
先輩は何時も通りの普通を装っていたけど、やっぱり気にしてるんだろう、まるで空気が抜けた様な感じだった。

でも先輩の前に現れたある人によって心の穴は塞がりつつあった。
そして先輩はその人に連れられて京都に旅立った。
 今頃どうしてるんだろう…… まぁ、会おうと思えば会えるし、その気になれば電話もかけられる、でもまた会うとしたら今度は夢を叶えてからだった。
 あの人だけじゃ無い、他の皆もがんばってる、だったら僕も頑張らなければいけなかった。
 何しろ折角皆で勝ち取った平和だ。何もしなかったら罰が当たる。

 大学前の公園に差しかかった。
 すると公園の中では2人の女の子達が木の上を見上げていた。
 2人供小学生5〜6年と言った所だろう、1人は長い黒髪と白いワンピース、もう1人は長い髪を三つ網みにして両肩から下げていた。
 僕はスクーターを止めると公園の中に向かった。
「どうしたの?」
 僕は女の子達に声をかけた。
 すると2人は一瞬僕の方を振り返り、やがて木の上の方を見て黒髪の子が指を差した。
「あそこ」
 僕も木の上を見るとそこでは小さな子猫が怯えて蹲っていた。
 どうやら上ったは良いけど、恐くて降りれなくなったらしい。
「2人供下がって」
 僕は2人を下がらせると木に手を足をかけると木を上った。
 そして子猫の側までやってきた。
『ハァァッ!』
 子猫は僕を見ると余計に枝の細い方へ向かって威嚇した。
「さぁ、おいで、恐い事無いから」
 僕は手を伸ばした。
 子猫はしばらく僕を警戒していたが、やがてゆっくり僕の方に近付いて来た。
 僕は子猫を抱きかかえて木を降り始めた。
 地面に降り立つと僕は子猫を子供達に手渡した。
「はい」
「わぁ、ありがとう、お兄ちゃん」
「どういたしまして」
 僕が言うと子供達は子猫を連れて去って行った。
 子猫が助かってホントに良かったし、子供達も笑顔になった。
 でも何か忘れてるような……
「あっ、しまった!」
 僕も急いでたんだった。
 慌ててスクーターに乗ると鍵を回した。