①銀の女王と金の太陽、星の空
私はまた、私室にひとりになった。
「太陽、大丈夫かな…。」
独り言が、やけにハッキリと聞こえる。
(探しに行こう。)
私はひとり、私室を出た。
(私が今、もし空の結婚話を聞いたら…。)
考えただけでも、胸が潰れそうに苦しくなる。
(好きな人が他人のものになるって、こんなに辛いことなんだ。)
空と出会って、初めて知ることばかりだ。
(もし、私が太陽の立場なら…。)
そう思った瞬間、足が止まった。
(私は余計、残酷なことをしようとしているのかも…)
もし、私が空に好きだと告白したけれど、空から『そんな目でみたことない』と告げられたとする。
その直後に、空の結婚話が話題になる。
そして、自らの力ではどうしようもない『身分』で、この恋が叶うことがないと思い知る。
(その時の気持ちって…。)
きっと、『苦しい』『悔しい』『憎い』…色んな感情が渦巻くだろうけど、そんな醜い感情を抑えようともするだろう。
その葛藤があっているときに、空が目の前に現れたら…?
(今の自分を見ないでほしい。)
私なら、そう思うかも。
(今はそっとしておいたほうがいいかも。)
でも、そうだろうか?
『今は会いたくない』そう思いながら、でも探しに来てくれたら『嬉しい』かも…。
けれど優しくされればされるほど、想いが募って余計辛くなるかも…。
「わかんなくなってきた…。」
とりあえず、いったん私室へ戻ろう。
(よく考えたら、護衛もつけずに単独行動するなんて、不用心すぎた。)
気がつけば、騎士達の私室が連なる棟へやってきていた。
「ここ、太陽の部屋。」
せっかく来たのだから、いるかどうかだけでも確かめてみよう。
(いたら、太陽に護衛してもらって私室へ戻ればいいし。)
私は扉の前に立つと、太陽との暗号のノックをした。
数秒待ってみたけれど、扉が開く気配がない。
「どこに行ったんだろう。」
私は踵を返して、扉に背を向けた。
その瞬間、扉が開く音と同時に後ろから口をおさえられ、そのまま暗い室内に引きずり込まれた。
(え!?)
目の前は明るい廊下が見えている。
けれど、それもすぐに扉が閉じて真っ暗になった。
心臓が破裂しそうなくらい、激しく鼓動する。
口をおさえる力が更に強くなったと思った瞬間、首に衝撃が走り、意識が深い闇へと堕ちていった。
『何者にも油断するなよ。』
空の声が頭の中に響いたけれど、そこで意識は途絶えた。
(『銀の女王と金の太陽、星の空(上)』完)
作品名:①銀の女王と金の太陽、星の空 作家名:しずか