EMIRI どんなに素敵な昨日でも
その曲は、恵美莉がよく、颯介と歌っていた曲だった。恵美莉は、みのりのおせっかいに、思うところもあったが、戸惑いながら春樹とのデュエットに応じた。颯介とは違い、タイミングを合わせ難い気もしたが、それでも楽しんで歌うことができた。
「やっぱり二人とも上手。すごくよかったですよー」
みのりのテンションで言われて、春樹も嬉しそうに笑った。
「おう、よく息合ってたな」
小峠も声をかけた。
「彼女さんともよく歌うんですか?」
みのりがストレートな質問を放つ。
「え? 今は彼女いないよ」
(やった!)
「恵美莉! 彼女いないって。もう付き合っちゃいなさいよ」
「え? なん。何言うのよ。藪から棒に」
「そうだよ。お似合いじゃないか」
(え?)
「こいつも川崎さんのこと、気に入ってるし」
(ぇえ?)
「ちょっと何言ってんだよ。まだ俺は・・・」
(え、え?)
「よかったね。恵美莉!」
(待って、ちょっと待って、なんか違う。こんなの違う・・・・)
カラオケの後は、飲みに行こうかという話になったけど、恵美莉は断った。もしカラオケでお酒を飲んでいたのなら、春樹との交際を承諾していたかもしれない。でも、冷静だった恵美莉は、今日の話の進展に、一旦落ち着いて考えたいと思った。
作品名:EMIRI どんなに素敵な昨日でも 作家名:亨利(ヘンリー)