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Red Rose(『Lady Rose』スピンオフ)

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「頼んだぞ、Red Rose、上手くやってくれよ」
「あら、あたしが仕事をしくじったことってあったかしら?」
 Red Roseと呼ばれた、長い黒髪に黒い瞳、細面の女は不敵な笑みを浮かべた。

 
 『仕事』の依頼主は名を明かさない上に仮面まで被っている。
 しかしRed Roseにとってそんな事はどうでも良い、目の前に積まれた札束だけが彼女にとっての真実なのだ。

 依頼主は中国共産党の有力者、最高幹部組織であるチャイナ・セブン入りを狙っている。
 しかし、彼には強力なライバルがいる。
 楊平(ヤオ・ピン)……軍部に大きな影響力を持ち、強引かつ狡猾な手法でいくつもの手柄を立てていて、いずれは主席にさえ手が届こうかと言う実力者だ。
 依頼主からすれば、今回のチャイナ・セブン入りだけでなく、その先を見据えても目の上のたんこぶになりかねない存在なのだ。

 Red Rose……便宜上普段は麗華(リンホワ)と名乗ってはいるが本名は……ない。
 リンホワはいわゆる『黒孩子(ヘイハイズ)』なのだ。
 かつての一人っ子政策下において、農村部などでは働き手となり跡取りとなる男の子が欲せられ、二人目、三人目を望めない以上、産まれて来た子が女の子であった場合、世間から隠してしまうことがあった。
 当然その出生は届出されず、この世にいないはずの人間として生きざるをえない。
 そんな黒孩子が成長しても、正規の雇用など望むべくもない、劣悪な状況下でこき使うだけこき使って体を悪くしたら使い捨て……社会の闇でしか生きられず、人知れず闇の中に消えて行く、それがヘイハイズの運命なのだ。
 Red Roseはそんな闇の中でも最も深い闇の中、殺し屋として生きている。
 もし仕事をしくじって捕まったとしても、ヘイハイズとわかれば裁判にも掛けられずに葬られるだけ、なぜならいないはずの人間、いてはいけない人間だから……野良犬や野良猫と同じなのだ。
 彼女に安全な場所などない、だから仕事は常に確実に遂行する、そのための労は厭わない……それしか生きて行く方法がないのだから。

 依頼者の政敵、ヤオ・ピンは最近新しい妻、洪美怜(ホン・メイリン)を娶った。
 メイリンは20代後半、腰まで届く黒髪に黒い瞳、細面のミステリアスでセクシーな美女、当然のように新妻の前ではヤオ・ピンはやにさがり、普段の冷酷とも言えるほどの厳しい顔とは全く違う顔を見せる。
 依頼者はそこに目をつけ、強大な権力ですら届かない深い闇の中からRed Roseを呼び寄せた。
 
▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽

「う……ううん……」
 薬をかがされ、誘拐されたメイリンが意識を取り戻した時、彼女は全裸でX字型の磔台に縛り付けられていた。
 目の前では覆面を被った一人の女がライトとカメラを準備している。
 辺りを見回すが、見覚えのない場所、わかるのは山小屋の中だと言うことだけ……。
 そして女の傍らにある古ぼけたテーブルにはロープや鞭だけでなく、様々な拷問道具が並べられている。

「おや? もうお目覚め? 思ったよりも早かったけど、まあ、それぐらいはどうでも良いわ、目を醒まさせる手間が省けたと言うだけのことね」
「あんたは一体誰?」
「あたし? あたしは誰でもない、世の中にいないはずの人間さ、そうね……呼び名くらいはないと不便でしょうから、Red Roseとだけ名乗っておくわ」
 女はそう言うとタンクトップから剥き出しになった肩を見せる……そこには鮮やかな赤い薔薇の刺青。
「ここはどこ? 私に何をするつもり?」
「どこ?って聞かれてもね……誘拐した女に教える筈もないでしょう? まあ、人里離れた山の中だと言うことだけ教えておいてあげるわ、あたしと同じで誰にも知られずにひっそりと存在している山小屋、二つ目の質問も愚問ね、女を裸にして磔にしているのよ、一緒にテレビでも見ましょうって言うと思う?」
「ど……どうして私を……」
「その質問にも答える義理はないけどね、まあ、あんた本人には別に何の恨みがあるわけでもないわ……ここまで言えばわかるでしょう? あんたの夫に、これからあんたが何をされるのかを見せ付けるためよ」
「そ、そんなことは……」
「旦那が許さない? 確かにあんたの旦那は権力者だけどそれが何だと言うの? 世の中には権力が及ばない闇もあるのよ……さてと、撮影の準備は出来たわ、そろそろ始めましょうか」
「始めるって、何を……」
「最初は……これよ!」
「きゃあっ!」
 メイリンは乳房に鋭い痛みを感じて悲鳴を上げる。
「あらあら、そんなに悲鳴を上げて……もっとも、泣き喚いてもらって良いんだけどね、でもね安心して、これはバラ鞭、肌に傷はつかなくてよ、もっとも、どう使ったら一番痛みを与えられるかは知ってるけどね」
 Red Roseはメイリンの背後に回った。
「それにしても見事な彫り物ねぇ、背中一杯に花園が広がっているみたい、旦那はこれに惚れたのかしら?」
 そう言いながら背後から渾身の力を込めてバラ鞭を振るう。
「ぎゃっ」
「うふふ……鞭はね、先端が一番痛いのよ」
 鞭はメイリンの脇腹に巻きつくように絡み、その先端は正確に乳首を捉える、そして、それは幾度となく繰り返され、磔にされているメイリンは体を折りたたんでうずくまることも許されず、悲鳴を上げる他はなにも出来ない。

「まあ、これしきでそんなにぐったりして……」
 30分後、もはやメイウェイはボロ布のようになって自力で立っていることも出来ずに縛られた手首にぶら下がっている状態、長時間上げっぱなしにされた挙句に体重も支えなくてはならない手首は青ざめて見える。

「あらあら、手首が青ざめちゃってるわ、治療して差し上げなければね」
 Red Roseはメイリンの右の乳房にかなり大きめの男根を象った、鈍く光る金属棒を押し付ける。
「これがなんだかわかる?」
 Red Roseは右手に持った同じような棒をメイリンの目の前で振って見せる、どちらの棒にもコードが繋がっているのが見て取れる。
「……まさか……電気?……」
「ご名答、拷問には良い道具よ、死の恐怖も味わわせられるのに体には傷ひとつつかない……もっとも、あんたから聞き出したいことなんかないから、責め道具と呼んだほうが良いのかもね」
「……やめて……」
「それを聞き入れるほど平和主義者じゃないのよね、あたし」
 Red Roseは無造作にもう一本の電極棒をメイリンの左の乳房に押し付けた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
「ああ、素敵、悲鳴って大好き、でも、声にならない悲鳴はもっと好きなのよね」
 メイリンの髪を掴んで上を向かせると、金属棒をその唇に押し込んだ。
「ぐふっ」
 金属棒は食道にまで達し、えずいたくらいではとても吐き出せず、上を向いたまま頭も動かせない。
「ふふふ……何をしようとしているのかわかる?」
 下のほうから声が聞こえる、その位置と言う事は……。
「あええ……」
 やめて、と言ったつもりだが、金属棒で唇が動かせない。
「……あぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
 唇から女陰へ、体の中心を電流が流れる。
「うぐっ、あぐっ、えぐっ」