聞く子の(むかしの)約束
エピローグ
過去の出来事を思い出すと、やるせない気分になることってないですか?
少年時代に熱中したアニメをWEBで見たら、当時の興奮を思い出すものの、もう取り返しのつかない何かを感じて、落ち込んだことがあった。
若さと言うものは無敵なのかもしれない。それをなくした今、思い出なんかに浸っても、いいことなんか何もないのかも知れない。
私は、もう48歳。見た目は若く見られるが、視力は2.0以上あるのに、老眼が進んで近くは見えない。メタボではないが、体はかなり硬くなってしまった。高校時代は体操部に所属していて、体力と運動神経には自身があったが、今はどっちかと言うと痩せてしまって、スポーツを嗜むようには見えない。でも、当時の友人は皆、デブになっているから、まだ自分はマシな方かと思う。市民運動会では、リレーに出場させられるが、20代の選手と引けを取らないぐらいには走れるし、宙返りだって、まだきっとできるはず。
絵を描く趣味も学生時代からずっと続けていて、描いた絵もそこそこ売れたりするが、自分の感性には限界を感じる。40代半ばに習い始めたピアノ、一人で弾けるようになったものの、腱鞘炎になって今はやめている。
ずっとうまく行っていた人生だったのに、最近はそうでもなくなってきた。
そうだ。私は、もう48歳なのだ。
店を出て、キクちゃんをタクシーに乗せて別れる時、私は握手を求めた。これも25年ぶり。
彼女の手を握ったのは・・・
終わり
作品名:聞く子の(むかしの)約束 作家名:亨利(ヘンリー)