小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
松浪文志郎
松浪文志郎
novelistID. 62568
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ふうらい。~助平権兵衛放浪記 第三章

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 





 近くの遊里で遊ぶつもりが、足はいつしか掛川の城下町まできていた。
新町通りの掘留でおでんの屋台がでている。
ちょうど腹がすいたころだ。権兵衛は屋台の空き樽に腰掛け、オヤジに酒とちくわ、ゴボウ巻きなどを注文した。

「へい、お待ち」

冷や酒を呑みながらちくわに箸を伸ばす。

「江戸か……」

つい、独りごとが漏れた。あの“野良犬”たちは江戸からきた……といっていた。江戸のどこだろうか? 
 権兵衛は下総の松戸にある浅利道場にいたが、師匠の師匠である江戸剣壇の名門、中西忠兵衛の一刀流道場にも出稽古に通っていた。
よく稽古帰りにおでん屋の屋台で朋輩と酒を呑んだ記憶が甦る。

(そういえば……あのひとはいま、どうしているだろうか?)

浅利道場の次席師範代を務め、権兵衛と同じく熱心に中西道場にも通って業前を磨いていた、あの男……。
ガタ、とふいに隣で空き樽を動かす音がして権兵衛は思惟を破られた。
隣の席に客が座ったのだろう、権兵衛は素知らぬふうで猪口に手を伸ばす。
すると、頬に刺さるような視線を感じた。
宙空で猪口をとめる。
権兵衛は隣に座った人物をみた。
その人物はじっと権兵衛をみつめている。

「すけひら……助平じゃないか……!」

「里嶋……さん……!」

浅利道場の元次席師範代・里嶋庄八郎がそこにいた。

    第四章につづく