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秘密

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 普段なら即刻断るのだが、その時は話だけでも聞いてみるか、と言う気になっていた。それから数日後にオバさんの家を訪れた。
「今は、女性の希望が高いから世間では三高なんて言ってるから、本当は男性は大学卒で無ければ入れないのだけど、あなたなら信用もあるから、特別に入会させてあげるわ」
 別に特別で無くとも良いのだが、俺みたいな高卒で専門学校に行った程度では世間は認めてくれないのだと悟った。俺が断られ続けたのも、それが一因かも知れない。
 話に載せられたのか、俺は入会金2万、年会費1万を払って写真を撮られ、入会の用紙に書き込んでいた。
 さて、それからが物凄かった。それからの一年で俺は50人近くの人とお見合いをした。一件紹介して貰うと5000円の紹介料を払うのでこれだけでも25万になる。貧乏ではやってられない。
 今の妻となった人が紹介される時の事は今でも覚えている。夜になり仕事を家に持って帰りやっていたら、午後9時頃になっていきなり電話が鳴り出した。その音を聴いて俺は
『この電話はお見合いの紹介の電話で、俺は今回の人と一緒になる』
 そう直感してしまったのだった。これは何故だか判らない。そんな直感を感じたのはこの時だけだった。
 電話の内容は、正しくその通りで、俺はその紹介する相手とお見合いをした。そして結婚した。驚きとしか言いようが無い。

 妻となった人は歳は俺と同じだった。まあ、歳なので焦っていたのかも知れなかった。特別美人でも無いが背が高いのが俺好みだった。体格が良いと言い換えても良い。これだけの体格に釣り合う男はそうはいないと感じた。同じ歳なので話がすぐに通じるのが良かった。
 そんなある日の事だった。俺の携帯に妻の親友から電話があった。
「あれ、掛け間違いじゃない?」
「ううん違うの!」
「不倫だったらやらないよ」
「あはは、それは私も無い……じゃなくて、奥さん最近おかしくない?」
 おかしいとはどの様な意味だろうか?
「別に……思い当たる事は無いけどね」
「そう、なら良いんだ。もし、彼女が何か言って来たら、受け止めてね」
 それだけを言って電話を切った。妻の親友とは結婚前からよく合っていて、結婚してから判ったのだが、どうやら俺を首実験していたらしい。結果は誰に合わせても「大丈夫」と言う事だったそうだ。でも、何だろうか、少し気持ちが悪い。
 その頃PCは、やっと普及仕出した頃でインターネットと言う言葉が持て囃された頃だった。今なら一人に一台だが、その頃性能の低いPCでも20万はした時代だった。
 結婚した我が家でもノートPCを大枚叩いて買った。俺と妻の二人で使っていた。そんなある日だった。俺はPCをネットに繋げてメールのチェックをしていた。ところが、読み込みに行ったメールホルダーが俺のでは無く妻のメールホルダーを読み込んでしまった。見る積りは無かったが、一つだけ目についたメールの題名があった。
「俺だよ!」
 妻とは言え人の秘密を見るのは良くないとは思っていたが、知りたくてクリックしてしまった。そこには
「結婚したんだって! おめでとう! よく結婚出来たね。旦那さんになった男の顔が見たいな。それと、その旦那で我儘な君が我慢出来るかな? 我慢できなくなったら何時でも連絡して良いよ。相手してあげるから」
 文面はそれだけだった。要するに昔の彼氏からのメールだったと言う訳だった。これには返信されていて妻が
「バカ! あんたなんか興味無いから、二度と寄越さないで頂戴!」
 そう書かれてあった。俺はそれを読んで、メールホルダーを静かに閉じた。
 この事は今でも妻には黙っている。俺の事も知られていないと思っていたら、暫くして年賀状の整理をしていた妻が
「あら、これ変よ。わたし達が婚約する前なのに『婚約おめでとう』って書いてある。面白いわね~」
 鼻歌まじりにそんな事を言った時は背中に冷や汗を掻いた。

 10年以上後で娘が俺に言った事では
「ママはねえ、物凄い恋愛をしたんだって。でも男の人がアメリに行くから着いて来て欲しいって言われたけど、どうしても出来なかったんだって。だから別れたそうだよ」
 そんな物語に変わっていた。
 秘密は思い出の中で変化するのかも知れない。


                     <了>
作品名:秘密 作家名:まんぼう