「歴女先生教えて~パート2」 第十九話
「これを見てわかるように、カエサルは暦に自分の誕生月を七月として加えた。そしてアウグストゥスも八月として加えて、暦は12か月となったの。さて、ローマ帝国以外をみましょう。メソポタミア文明の刺激を受けて古代エジプトが統一されたように、どこの地域でも強い外圧を受けると、必ず反作用が生じるの。
インドの場合は、以前のアカイメネス朝ペルシャがインドまで進軍するんだけど、インダス川で止まっていたの。でも、アレクサンドロスは初めてインダス川を越えて、本気で攻め込む準備をしていた。こうして、アレクサンドロスの進入を契機として、インドの地にマウリヤ朝という統一国家が誕生する。この王朝は三代のアショーカ王(在位:BC268頃~BC232頃)の時に、インドの南端以外を支配する大帝国になったのよ」
「インドと言えば古くインダス文明が栄えた土地ですね?もっと早くに大きな国家として機能していたと思っていましたが、違うんですね」
「ええ、インドは統治が難しいと言われる地域だったの。インダス川中流域(パンジャブ地方)とガンジス川中流域という二つの中心があり、南のデカン高原は暑くて乾いていて、民族も多様なら、言語も多様だった。何かのはずみで統一されたとしても、外圧が無くなったらすぐにバラバラになってしまうのね。マウリヤ朝も150年弱で崩壊する。地理的条件も気候条件も違う広大な地域を統一しようとすれば、統治技術が相当進化していないと不可能だという事よ。マウリヤ朝の後は16世紀のムガール朝までインドには統一国家は生まれなかった」
「インダス川は西の果て、ガンジス川は東の果てですね。これだけ離れていると、お互いの文化や民族の考え方などが違ったでしょうから、統一するというのは中国のように難しいことだったのですね」
「そうね、今度はその中国を見てみましょう。中国では周が建国後300年弱で覇権を失い、春秋時代、戦国時代と群雄割拠の時代が続いたの。そしてインドに100年ほど遅れてBC221年、秦(しん)の始皇帝が初めて統一するの。英語のChinaはこの秦が語源
となっているとみられるのよ(ペルシャ語の陶磁器を意味する言葉が語源であるとも言われます)
始皇帝は古代ではおそらくダレイオスと並ぶ極めて有能な名君だったと思われるわ」
ここで授業は終わりとなった。
作品名:「歴女先生教えて~パート2」 第十九話 作家名:てっしゅう