女の開花前線
ゆっくりと出し入れすると、潤滑のエキスがないから、男根を包み込むような動きをする。
「体は寝てるのに、ここは起きてるやんけ」
「ぎゅっとして」
男は背中に手を回して、女を抱きしめた。
「あたたかい」
「うー、うー」
女は顔をのぞけさせて反応する。男根が抜かれる。女は、どうしてと、違和感を抱いた。
「楽しんだの」
「一休みしよか」
二度目のセックスが終わった。
車の音がする。夜が明け始めたのだ。男は、男根をつかませる。堂々たる自信だ。
「口に入れろ」
女は男のお腹の上に顔を乗せて、口に含む。男根が膨張すると、
「上になれ」
女はまたがる。
「痛い」
愛液が不足しているのだろうか、疲れているのか。それでも男は、女の腰をしっかり押さえ、固定して、下から出し入れする。出し入れしながら、お尻をたたくと、一挙にあふれてくる。
「濡れてきたな」
叩く効果をたしかめると、さらに強く、お尻を叩いた。叩きながら、男根の出し入れを激しくした。三度目のセックスが終わった。
7時のアラームが鳴る。
「舐めろ」
男根はたちまちおおきくなる、女は自分の技に満足する。
「舐めて大きくしたの、柔らかいのがお口の中で大きくなっていくの」
根元を口で締め付ける。玉ももむ。
「おわったら、なめて掃除したんか」
同期は、女の過去を問いただそうとした。
「してへん」
4度目の挿入。
「好きよ」
「何が好きなんや」
「あなたが好きよ」
「男が好きって言ってみろ」
「男が好きです」
男の激しい動きが、女の下半身の動きを誘った。体がぶつかり合う音がする。よその部屋に聞こえてしまわないかと心配する。
「出てる」
「出てる、のわかるのか」
「出てるの、わかる」
「ええ女になったなあ」
「ありがとう」
「たくさん出てたんか」
男は執拗に、女の過去を問い詰めた。
「出てなかったと思う」
子宮の底をつつく。女は狂おしい表情を示し、顔を振って反応した。
「いったか」
「Ⅿ、いった」
「よかったか」
「ありがとう」
「男、好きって、なんで言わせるの」
「Ⅿをな、淫乱な女にしてみたいんや」
「ほかの男とするの」
「してみたいやろ」
「どんなんかと思う」
話しながら、また責めたくなる。指を入れる。一本、二本、三本。
「指が三本、入ってる」
「三本も」
三本の指を、男根のようにして、遊ぶ。
遊びながら、クリトリスをなめる。
「ああーああー」
女が悶える。
クリトリスを剥く、剥いて口の中に包み込む。
「あうー、うー」
呻き続ける。セックスが四度、繰り返された。
男が5度目の挿入に挑んでくる。
「かんにんして、もうかんにんや」
「いやなんか」
「からだのあちこちが痛い、なにも感じひん」
「つかわせろ、俺の女やろ」
「そんなにしたいん、Ⅿはもういい」
男は新たな方法で責め続ける。
「前の男の名前、言ってみろ」
女はかぶりを振って、答えない。男が、バーン、とほほを叩く。女の子宮がきゅっと反応する。
「締め付けてるやないか、いやらしい女やな」
女は叩かれるのが嫌で
「Aさん」
名前を言ってしまうと、身も心もはじける。女は腰をグラインドさせる。
「ええやんけ、ええ動きや」
「Aさん、いいよ、いい」
女は男の希望どおり、前の男の名前を言いながら、快感を急上昇させていった。二人の男に責められているような不思議な状況設定だった。すると、身を投げ出すような、体が浮くような不思議な感覚に襲われた。
五度目も満ち足りたセックスとなった。
「このごろ、よくなった、反応が深くなった、すごい」
「おかげさまで」
「俺専用になれよ」
「あなた専用よ」
「ええ女や」
「なんで、こんなに元気なの」
「おまえがええからやな」
「眠りたい、寝させて」
しかし、男は1時間も眠ると、また女を責めたてた。女にのしかかり、男根を花芯の入り口だけで揺すった。
「Ⅿの使って、気持ちよくなって、性欲処理してください」
女はもう娼婦の心境だった。男にすっかり仕込まれて何をされても最後は深い快感に浸ることができるようになった。一晩で何度も繰り返されたセックスの果て、もう女は錯乱して、自虐的な言葉を発するのだった。
女は考えた。前の男との決定的な違いは、子宮の奥が感じるようになったことだと。前の男は乱暴な言葉にとどまったが、この男とのセックスには暴力が伴って、サドとマゾとが性欲を飛躍させた。
同期との婚約は2年も持たず、破談する。男の暴力で、顔に大けがをしたからだ。つい自己主張してしまい、同期を怒らせてしまうことがたびたびあり、男は女の言葉を暴力で抑えこんだ。
友人たちが
「もうやめたら、あんな男」
と忠告した。
前の男との付き合い過程には、女になっていく自然さがあり、内面形成のドラマだった思う。しかし、同期との付き合いは、いろんな意味で自我の崩壊を招くものだった。
「よく別れられたね」
親友はやさしい言葉をかけてくれた。
「ありがとう」
「ええ香りやわ」
「エンゼルトランペット、珍し」
二人は、烏丸通に面する商家の前に咲いている花を指さしながら、近づいて香りをたしかめた。
「夏の終わりに咲く花や、思うてたけど」
「今年は暑かったからと、ちゃうやろか」
「長いんや、咲くのが」
「そうやなあ、長いんやなあ、うち、この花、好きや」
女は、なぜ好きなのかは説明しないまま、親友と分かれて、春の終わりのおだやかな風に包まれながら、家路についた。
今度こそ、幸せをつかむのだ、幸せになれる、女は、自問し自答するのであった。