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その日までは

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 母だけでなく、父からも突き放され、半ばやけになって友人宅に転がり込んだものの、冷静になるにしたがって、子どもたちのことや今後の生活のことが心配になりだした。そして、父に言われたこと、母に言われたこと、そしてこれまでの自分の言動を一晩中考えてみた。翌朝、友人からの連絡で、自分を迎えに来てくれた和也の顔を見た時、自分の愚かな行動を心から恥じ、同時に自分にとって和也がどんなに大切な存在であるかが初めてわかった。
 恵子は顔を上げ、悪いところは直すから、親子四人でやり直させてほしいと懇願した。
 恵子の話をただ黙って心を傾けて聞いていたのは、和也にとって妻への最後の思いやりだった。それを終えた和也は、こう答えるしかなかった。
「夫婦のことだから、君だけが悪いわけではないよ。ただもう遅いんだ、もう終わったんだよ」
 恵子はその場で泣き崩れた。

 そして、出掛けに聞いた万里子の言葉に、今度は和也が打ちのめされた。
 自分が出て行っても、当然、恵子たちには両親がついていると思っていた。だから、万里子の話でその考えが根底から崩れてしまった。子どもたちとともに親元で暮らせると思っていたからこそ、決断もできたのだ。それがこうも事情が変わっては、踏ん切りがつけ辛くなってしまった。自分の方こそ、冷たい夫、冷たい父親になってしまうではないか……
 恵子は、娘たちはどうなるのだろう? 憐れみの情は湧くが、それだけで結婚生活が続けられるわけではない。もう、心はとうに離れているのだから。

作品名:その日までは 作家名:鏡湖