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ライバル~風~

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 そんな縁だったが、クラスメートの顔と名前は忘れてもそいつの顔と名前は未だに覚えている。
 
 あの当時、缶コーヒーの種類はそう多くはなく、かなり甘いやつが主流だった。
 スマートだった俺の体は、今じゃ健康診断を受けるたびにメタボ指導の通知が来るようになって、糖分はなるべく控えている……でも、今でもその缶コーヒーを見かけると、つい手を伸ばしてしまうことがある。
 そして、そのプルトップを空ける時、一瞬だが、あのスタンドに吹いていた晩秋のひんやりした風を感じるのだ。

 『青春』と言う言葉はあまり好きじゃない、それは生活に疲れて来たオヤジが若き日を美化して懐かしむ言葉だと思っている。
 『青春を陸上にかけた』なんて言えるレベルでも到底ない。
 高校生活の一部に陸上を組み込んでいただけだ。
 しかし、あの最後の大会で感じた風、スタンドに吹いていた風、そしてあいつの笑顔は、今でもなぜか心に染み付いている……。

(終)
作品名:ライバル~風~ 作家名:ST