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月が綺麗だなんてキザっぽくて

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 それから十数分して、部屋のドアがノックされた。高田の大きな声が響いてくる。近所迷惑だと言いながら、俺はふらふらとした体を支え鍵を開けた。
「よお、待ったか?」
「酒とつまみだけ入室を許可しよう。」
「まあ、そう言うなって。」
 そう言ってズカズカと部屋の中に入ってくる。高田は部屋に入って中央に陣取ると、分かるように鼻をすんすんと鳴らして、臭い臭いという格好を見せた。
「くっせーな。ちゃんと換気しろよ。」
 高田はコンビニ袋を床に下ろすと、ベランダに向かいカーテンを開けた。薄汚く曇った窓を開けると冷たい風が吹いてくる。アパートに帰る頃には冷たくて仕方がなかったが、今は酒に酔って流れてくる空気が、すこし心地よかった。窓の祖に見える空はいつの間にか雲が晴れて月が出ているのだった。
「なあ、高田。」
「何だ?」
「今日も月が綺麗だな。」
「そうだな。」
 そう言うと俺は窓から目を離し、高田が持ってきたコンビニ袋をまさぐってチューハイを取り出した。