月が綺麗だなんてキザっぽくて
昔のどこかの有名な人は、"I LOVE YOU"を訳すときに「我君ヲ愛ス」なんて日本人が言うものか「今夜も月がきれいですね」と訳す方がよっぽど正しい。等と言ったそうだけれど、今時は「月が綺麗だね」何て言葉すらもキザっぽく恥ずかしくて言えやしないと思う。
それに今日は曇っていて月も出ていない。雪だって降っていないし、紅葉の季節でもない、桜も咲いてはいないのだから、「愛してる」の代わりに何を言えばいいのか想像も付かない。
何より、隣に愛してると言いたい人が居ないのだから格好も付かないのだけれど。
今日こそはと思って、遊園地に誘ったけれど、結局彼女とは笑顔でついさっき分かれてきたばかりだった。
俺はアパートの部屋に帰ると、チューハイを一杯取り出す。一気に半分のんで、はあっとため息をついた。直ぐにもう半分を飲み干して、冷蔵庫からさらに一本を取り出す。缶の蓋を開けたところでポケットの携帯が震えだした。
「よお。」
電話に出ると、同じ学科の高田が陽気な声を飛ばしてきた。俺は鬱陶しくなってすぐにOFFボタンを押した。携帯を床に置く前にまたリダイヤルがかかってきた。
「アパートか?」
「おう。」
「じゃあ、やけ酒だな。」
「なんでだよ。」
「今日告白するって言ってただろ。」
「言ったっけか。」
「言ったな。」
「言ってない。」
「一緒に飲んでやるから元気出せ。」
「一人で飲ませろ。」
「分かった、直ぐ行くからな。」
高田はそういって通話を切った。俺は口を付けていなかったチューハイを啜り始めた。三本目のチューハイを取り出して、流石に酒だけでは物足りなくなった頃に、また携帯が騒ぎ出した。
「途中でコンビニ寄るけど何か買うか?」
「酒はチューハイで良いよな。つまみは何が良い。」
「たこわさ……。」
おう、と言って高田は電話を切った。俺はまた酒を啜り始める。通話がとたんにシンとして、本当に惨めな気持ちになってくる。溜まらなくなって缶を一気に煽って飲み干した。がーっと大きなげっぷが出た。つくづくダメ人間だなと思ってしまう。
また電話が掛かってきた。
「なんだ?」
電話の向こう側からは、高田の声ではなく女性の声が響いてきた。
「ああ……森坂さんか。今日はありがと。何か用?………うん……うん、ああ……うん。いやこちらこそ。ところでさ、言いたかったことがあるんだけど……。」
それに今日は曇っていて月も出ていない。雪だって降っていないし、紅葉の季節でもない、桜も咲いてはいないのだから、「愛してる」の代わりに何を言えばいいのか想像も付かない。
何より、隣に愛してると言いたい人が居ないのだから格好も付かないのだけれど。
今日こそはと思って、遊園地に誘ったけれど、結局彼女とは笑顔でついさっき分かれてきたばかりだった。
俺はアパートの部屋に帰ると、チューハイを一杯取り出す。一気に半分のんで、はあっとため息をついた。直ぐにもう半分を飲み干して、冷蔵庫からさらに一本を取り出す。缶の蓋を開けたところでポケットの携帯が震えだした。
「よお。」
電話に出ると、同じ学科の高田が陽気な声を飛ばしてきた。俺は鬱陶しくなってすぐにOFFボタンを押した。携帯を床に置く前にまたリダイヤルがかかってきた。
「アパートか?」
「おう。」
「じゃあ、やけ酒だな。」
「なんでだよ。」
「今日告白するって言ってただろ。」
「言ったっけか。」
「言ったな。」
「言ってない。」
「一緒に飲んでやるから元気出せ。」
「一人で飲ませろ。」
「分かった、直ぐ行くからな。」
高田はそういって通話を切った。俺は口を付けていなかったチューハイを啜り始めた。三本目のチューハイを取り出して、流石に酒だけでは物足りなくなった頃に、また携帯が騒ぎ出した。
「途中でコンビニ寄るけど何か買うか?」
「酒はチューハイで良いよな。つまみは何が良い。」
「たこわさ……。」
おう、と言って高田は電話を切った。俺はまた酒を啜り始める。通話がとたんにシンとして、本当に惨めな気持ちになってくる。溜まらなくなって缶を一気に煽って飲み干した。がーっと大きなげっぷが出た。つくづくダメ人間だなと思ってしまう。
また電話が掛かってきた。
「なんだ?」
電話の向こう側からは、高田の声ではなく女性の声が響いてきた。
「ああ……森坂さんか。今日はありがと。何か用?………うん……うん、ああ……うん。いやこちらこそ。ところでさ、言いたかったことがあるんだけど……。」
作品名:月が綺麗だなんてキザっぽくて 作家名:春川柳絮