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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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桜の名所で

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(語り手:安倍 結桜)

 その日、私は2人の同僚と桜見物をするために、あるお寺に行きました。そのお寺は、私の住む地では最も人気のある桜スポットなのです。その日も、何人もの、いいえ、何十人もの見物客が訪れて、立派に咲く桜を愛でていました。


 私が友人たちを待ちながら1人で桜を見ていると、若い外国人女性が2人、私の目にとまりました。正直、私は驚きました。
(外国人も、お花見をするのね…)
 などと、心の中でつぶやきました。

 すると、彼女たちも私の存在に気付き、軽い驚きの叫びをあげ、好奇心いっぱいの目で私を見ました。特に、少し派手な外見の、10代に見える子が、
「え、マジ?すごっ!ヤマトナデシコ!」
 と騒ぎ立てました。私は、彼女の様子を見て、ほほ笑んでみました。
「ね、写真撮っていい?」
 その子がそう聞いてきたので、私は喜んでOKしました。自分で言うのも何ですが、私は英会話ができるので、やりとりは英語でやりました。見事な桜をバックにしたショットが撮れて、少女はうれしそうでした。
「ありがとーー!」
 そのあとも、彼女は桜の写真を何枚も撮っていました。


 もう一人の女性の方は、抱っこひもに赤ちゃんを抱いて、静かに景色を見ていました。その人は、私のほうを見ると、
「素敵な服を着ていますね」
 と言ってきたので、私は控えめに笑って、
「ええ、ありがとう」
 と返しました。

 するとそのとき、女性に抱かれていた赤ちゃんが、何か珍しいものを見るような顔で、私を見てきました。私はその赤ちゃんのくりくりした目を見て、すっかり口元がほころび、首を少しだけ傾けてみせました。そうしたら、赤ちゃんも私のまねをするかのように、首を傾けました。その愛らしい仕草に、私はくすっと笑いました。そうしていると、母親のほうも私を見て静かにほほ笑みかけ、近付いて、話しかけてきました。
「私、日本に来るのは、今回が初めてなんです。日本の桜はとても美しい、とうわさには聞いていたけど、実際に来てみたら、こんなにも幻想的なものが見られた…。私、ここに来てよかった。本当によかったわ」
「そう聞いて、私もうれしいです」
 私がそう答えると、その女性は、またしばらく桜を見つめていました。その顔は穏やかでしたが、どこかさみしそうにも見えました。やがて、一筋の涙が彼女の頬を伝っていたのを、私は見ました。彼女が何を思っていたのかは、そのときはまだ分かりませんでした。
作品名:桜の名所で 作家名:藍城 舞美