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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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黄泉明りの落し子 狩人と少年

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 それからどれほどの時間がたったのか、わからない。
 数日かもしれず、数年のようにも思えた。あるいは、ほんの数分しか、経っていないのかもしれなかった。
 木々は、波は、歌を歌い続けていた。夕日は、大地を照らし続けていた。

 ピクシはうつぶせに倒れ続けていた。涼しい風が駆け抜けていく中で、微動だに、することがなかった。

 彼のすぐ傍で一輪の花が、風に揺れていた。
 その全身に太陽を浴びて、瑞々しい生の充足に、歓喜しているかのように見えた。

「……だんな」

 風に乗って、声が響く。
 やがて、始まる駆け足の音――少しだぶついた靴が、岩肌を打つ音。
 その音は、だんだんと大きさを増していく。

 花に一瞬だけ、影がよぎった――その直後に、足音が止まった。

「……だんな。ねえ、だんな」
 足音の主は、屈みこむと、ピクシの肩を揺すった。
「ピクシのだんな――」
 少年が呼びかける中で、風が強まっていった。

 ゆっくりと、確かに、ピクシの目が開かれていった。



 ☆終わり