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うすべに~写紅桜恋絵姿様(さくらにうつすこいのえすがた)~

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 温かな春の風が吹き抜けて、薄紅色の花びらが舞い上がった。それは、恭介が描いたあの桜の花びらと同じ色をしていた。香桜留は花びらを追って空を見上げた。
 桜は変わらず咲き続ける。ずっと、この場所で。今ここで思いを託したなら、時を経て、恭介に伝えてくれるだろうか。いつか生まれ変わった恭介が、この場所に立ったとき・・・。
 香桜留は空を舞い踊る花びらのひとつひとつに、そっと思いを託した。恭介を心から愛したこと。どれほど時が流れても、決して彼を忘れはしないと。温かな記憶を胸に、前を向いて歩いていくと。
 そして願った。いつか時を超えて、この桜に託した「手紙」が恭介のもとに届くことを。

 薄紅の嵐は、静かに空に吸い込まれていった。