Our Glorious Day
やがて救急車が到着し、私は病院に運ばれました。付き添うことになったピッパとともに。緊張しているのでしょうか、彼女は白い顔で足を震わせているのが分かりました。
10分ほどで病院に到着し、分娩室へ入りました。助産師さんがピッパに立ち会いをするように頼むと、少女は目を丸くしながらも、うなずきました。一方、私は産みの苦しみにひたすらうめいていました。そのときはひどく、ひどく苦しくて、ほとんど何も覚えていません。ただ、最初は落ち着かずにきょろきょろしてばかりだったピッパが、いつの間にか私の手を握り、何度も
「大丈夫、頑張って!」
と声をかけてくれたことは、鮮明に覚えています。
長い長い苦しみの末、赤ちゃんが高らかに産声を上げました。そのときの喜びは言葉にはできず、ただただ涙が出ました。立ち会ってくれたピッパも、大声で泣きながら
「生まれた〜!うれしいよう〜〜!サラ、本当におめでとう〜!!」
と心からの祝福の言葉をくれました。
それから5分とたたないうちに、夫が入ってきました。彼が私を見た瞬間、目を潤ませて駆け寄り、私の両頬と右手に熱くキスをしました。
「おめでとうございます!元気な男の赤ちゃんです!」
助産師さんの言葉を聞いて、彼は耳元で穏やかに、しかし力強く
「サラ、よく頑張ったな。おめでとう」
と言いました。
「うん、ありがとう、ティム」
私が答えたあと、彼は私の横に居る生まれたばかりの息子を、優しい目でしばらく見つめました。途中で、何度も目をこすっていました。
ピッパはというと、感動の余韻に浸りながら、
「ピッパ…ピッパ…ここに居て良かった…グスッ」
ティムは、そうしている彼女に近寄り、
「ピッパ、立ち会ってくれたんだな。どうもありがとう」
と声をかけて右手を差し出し、少女と固い握手をしました。
そのあと、私たちは、生まれた子を「スティーブン」と名付けました。夫の父親にちなんでの名前です。隣で眠るスティーブンに、私はささやきました。
「私たちに与えられた、輝かしい贈り物。それがおまえよ、スティーブン」
土曜日、午後の青空が美しい日でした。
作品名:Our Glorious Day 作家名:藍城 舞美