遊遊快適
人を好きになることに理由は要らない
――いや、大いにあるのが当然でしょう
言葉にできない、言い表せない
――恋は、理屈ではなく本能だから言いようがないって?
好きな人にどきどきって自然と体が反応している
――どきどきと心地よさを感じたから好きになったのでしょう
恋は理屈を超越した世界なの
――相手の「ここが好き」を決めているのは自分自身じゃない?
すべて 心が弾んで遊んで心地よく楽しめなくっちゃ好きになれない
心が遊ばないことって長くは続かない
ハヅキにとって賀門と過ごす時間は、賀門にときめいている自分自身を好きになっている時…… こころ遊遊快適なのだ。
どんな小さな出来事も、あたりまえの行動も、何気ない会話も、心を弾ませる要素があれば、快適に感じられる。 それこそが自然なことなのだ。
「ねえ、そろそろ七番目になれる?」
「七番目? なに?」
「なにって…… 『僕の八番目の女(こ)ね』って言ったでしょ?」
「そうだっけ? 誰にも順番なんてつけられないでしょ?」
「そうなの?」
「ハッチは ボタン付けなら一番だし、つまみも美味しいよ」
「あ、ありがと……」
「髪の毛も一番長いし、キスも一番長い」
賀門は吹き出した。
「あ、キスしたかった?」
「そんなんじゃない」
「こういうの嫌?」
ハヅキも 言いたいことを大きく息を吸い込んで留めると ハァっと息を吐いて散らした。
「スキ キス」
賀門の頬に唇をくっつけた。
「はい、ビールちょうだい」
「あぁん、はぁーい」
ハヅキは、冷蔵庫にもう一本ビール缶を取りに行った。
振り返り笑顔を向けたハヅキ。
「ねえ、餃子食べる?」
ふたりの時間はまだ続くのでした。
― 了 ―