カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅶ
「副長はともかく、今の総務部長と運支部長は人徳のある人間だから、どちらかの管理下にあるなら、吉谷女史も悪い扱いは受けないと思う。私も二人とは面識があるから、内々に頼んでおくが……」
言いかけて日垣は、机の上に顔だけ出した格好の美紗に視線を向けた。
「そっちは、任務完了?」
すっかりコーヒー色になってしまった雑巾を握りしめていた美紗は、慌てて「はい」とだけ答えて立ち上がった。穏やかに笑い返す彼の眼差しは、やはり、わずかに暗く陰っていた。
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作品名:カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅶ 作家名:弦巻 耀