「歴女先生教えて~パート2」 第八話
「うん、昔はねそれぞれバラバラに興ったと考えられていたんだけど、今ではメソポタミア文明の刺激を受けながら、各地の文明が興ったという学説が有力なの。特に遺跡から出てくる特産品にはそれぞれの文明に共通するものがあり、メソポタミア、エジプト、インダスの三つは結びついていると考えられるの。遠く離れた黄河文明についても、青銅器やチャリオット(二輪戦車)などは、中央アジアを経てメソポタミアから伝わったと考えられる」
世界史授業の初めには基本となる四大文明の発祥が教えられた。
そして古代・中世・近代へと進む。
美穂は歴史が人の歴史だという観点から、重要視しているものに宗教観があった。
物の価値観や考え方に宗教の教えは大きく関わっているのだ。
日本人の理解には日本人が教えられてきた宗教観、それは仏教であり、儒教であり、時代で異なるが太平洋戦争前までに根付いていた価値観は儒教の一部朱子学だった。皇国史観との一致で国家は絶対君主の天皇を筆頭に男子が成すべき国家への奉仕が叩き込まれていた。
愛すべきなのは天皇であり、国家であり、家族であると同時に、命を捧げるのも
天皇へであり、国家へであり、家族へでもあった。
その一体感が日本人の根底に流れていたからこそ、敗戦から国内に混乱も起こらず、分裂もなく、経済的に目覚ましく発展した原動力となった。
美穂はその精神を子供たちに教えたいと願っている。
前の工業高校の生徒にもそれは話した事でもあった。
「さて、人類最初の帝国が誕生したのは、メソポタミア地方全域からアナトリア半島西部まで遠征した、アッカド王のサルゴンだった。メソポタミア北部のアッシリア地方、南部のバビロニア地方を統一したのね。そうしてできたのがアッカド帝国と呼ばれる国家なの。紀元前2334年のこと。帝国には共通の言語が必要だったので、アッカド語が使われたのね。そしてこれが人類初の共通語(リンガ・フランカ)となったの」
「そのアッカド帝国はどのぐらい栄えたのですか?」
「うん、およそ150年かな。そのあとはシュメール人が再統一するの。世界最古の法典を作り、続けて道路も整備して100年ほど続いたわ。そしてこの後はいくつかの民族が入り乱れた分立時代に入って行く」
終わり時間のベルが鳴った。
美穂が教室を出ようとしたときに朋美と未海から声を掛けられた。
作品名:「歴女先生教えて~パート2」 第八話 作家名:てっしゅう