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ナイルだ! ライダー!

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 仮面ライダー1号・本郷猛は満面の笑顔でカイロ空港で二人を出迎えてくれた。
「結城、良く来てくれた、また会えて嬉しいよ、そして君が晴子ちゃんか、いやいや、こんなに可愛らしい陰陽師がいるとはね、俺も日本に住みたくなるな」
 晴子はぽっと顔を赤らめた。
 一文字は硬派過ぎて、結城は生真面目すぎて軽口は叩かない、剛は志のぶしか目に入らない、おやっさんは適当に軽いが如何せん歳が離れすぎている、ストレートに『可愛らしい』などと言われれば嬉しいものだ、悪と戦う陰陽師だが、晴子は年頃の女の子なのだ。
 しかし、はるばるエジプトまで来た目的は死神博士の野望を打ち砕くため、本郷もすぐに真顔になる。
「到着するなり早速で申し訳ないんだが、今日、死神博士たちが大規模な集会を開くんだ、俺と一緒に来てもらえないか」
「もちろん行くさ、そのためにエジプトに来たんだ、その集会はどこで?」
「ここからそう遠くはない、ギザだ」
「ギザで? なるほど、本格的に神格化をするつもりか」
「ああ、間違いない、これ以上民衆の心を掴むとやっかいだ」
「やっかいだ、では済まない、本当に政権を握ってしまうかも知れないぞ、なんとしても阻止しなければ、急ごう!」


ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!


「セ・ベ・クッ、セ・ベ・クッ、セ・ベ・クッ、セ・ベ・クッ……」
 クフ王のピラミッドとカフラー王のピラミッドに囲まれた広場は数十万人の群集で埋め尽くされ、セベク神の名を叫びながらその登場を待ち望んでいた。
 そして、カフラー王のピラミッドの頂上にセベク神……本当は改造された一介の戦闘員に過ぎないのだが……が姿を現すと群集の興奮はピークに達し、ピラミッドも揺るがすかのような大歓声が沸き起こる。
「エジプトの民よ、我と共に歩まん、我こそがエジプトを正しき繁栄の道に導くことが出来る唯一の存在ぞ!」
 ワニ男がそう叫ぶと、カフラー王ピラミッドの背後に沈む夕日が彼の体と重なる、死神博士はそれを計算して時と場所を選んだのだ。
「おお……ラー(太陽神)だ……:
「セベク神はラー神と同化された」
「あのお姿こそ伝説の……」
「そうだ! セベク・ラー神だ! セベク・ラー神が降臨された!」
 群集は一様にセベク・ラー神の前に跪き、ひれ伏した。

 そして筋弛緩剤で捕獲しておいた大ワニが、そのタイミングで群集の背後で放たれる。
「あれは! ギュスターブではないか?」
 そこには6mを越える巨大なワニ、のそり、のそりとピラミッドに向かって這って来る。
 ひれ伏していた群集は『十戒』の海割りの様に割れ、ピラミッド上のワニ男とギュスターブの間に道が拓けた。

(さあ、奴を倒して来い、そうすればお前の神格化は完成する)
 死神博士がワニ男に囁く。
(本当に大丈夫なんでしょうね、思ったよりもずっとデカいですよ、なんかこっちを睨んでるし……)
 ワニ男は不安げだ……6mクラスのワニと戦わなくてはならないのだから無理もない、武器と言えば手にした杖位のもの、後は持ち前のワニの顎だけが頼りなのだ。
(大丈夫だ、麻酔銃で筋弛緩剤を打ち込んである、動きがのろいだろう? あれ以上速くは動けんよ)
(でも嫌だな~、やっぱり怖いっすよ)
(つべこべ言わすに行かんか!)
 ドンッ!
 ピラミッドの頂上で後ろから突き飛ばされたのだからたまらない、ワニ男は全速力でピラミッドを駆け下りる、駆け下りなければ階段落ちだ、『蒲田行進曲』の池田屋階段落ちどころの騒ぎではない。
「うわ~!」
 ワニ男をセベク・ラー神と認識している群集には悲鳴も雄叫びに聞こえる、伝説的怪物、300人を食い殺した悪魔を我らがセベク・ラー神が倒してくれる、期待に満ちた目がワニ男に注がれ、ワニ男はピラミッドを駆け下りた勢いを止められないままにギュスターブの目前に……ギュスターブは巨大な口を開けて待ち受けている、その中にはナイフのように鋭い歯が無数に並んでいる……。
「どひゃ~!」
 ワニ男はギリギリで大きくジャンプし、ギュスターブを飛び越して危うく難を逃れた。
 するとギュスターブは素早く向きを変えて再びワニ男を襲う。
(マ、マジかよ! 速ぇ~よ! 本当に筋弛緩剤打ったのかよ~!)
 ワニ男はギュスターブの噛み付き攻撃を交わすので精一杯、とてもじゃないがこんな怪物とは戦えない、ギュスターブが噛み付きに失敗した隙をつき、更に尻尾の攻撃も飛び越え背後に回ってピラミッドに向かってひた走る、そして悠々とピラミッドを降りてくる死神博士に向かって叫んだ。
「博士~! 話が違います! こいつ動きが速いです!」
「バ、バカ、博士と呼ぶな! 逃げるんじゃない、戦え!」
「ムリ! ムリっすよ! そんなこと言うんだったら博士が戦えばいいじゃないですか!」
「バカモノ、ワシは大幹部だぞ、そんな危険な真似が出来るものか!」
「本当に筋弛緩剤打ってあるんですよね!」
「打った……打ったが、少し量を加減しすぎたかな」
「どうして加減するんですか~!」
「あまり動きがのろいと戦いにリアリティが出ないからな」
「そ、それが理由っすか!? アンタそれを本気で言ってるんすか!?」

 セベク・ラー神が勇猛にギュスターブを倒してくれるものと見守っていた群衆にどよめきが広がる。
「なあ、様子がおかしくないか?」
「だよな~、博士とか筋弛緩剤とか……」
「従者が神に言うような口調じゃないし、神が従者に言う言葉でもないよな」
「話が違う、とも言ってたぜ」
「やらせか? これは」
「セベク神ってのもニセモノなのか?」
 しかし、ギュスターブがうろついているのは現実なのだ、セベク神が倒してくれないとわかれば逃げるしかない、広場はパニックに包まれかけた。

 その時だ。
「とぉっ! ライダー・キック!!」
「グォォォォォ!」
 大きくジャンプした仮面ライダー1号の、脚力と落下エネルギーを最大限に生かした踏みつけキックがギュスターブの頭部に炸裂、地面にめり込ませてしまう。
「だ、誰なんだ? あのギュスターブを一撃で倒したぞ!」
「あれは……」
「ネットで見た事があるぞ」
「俺はテレビで見た!」
「俺なんか映画館で見たぞ!」
「「「「仮面ライダーだ! ライダーがギュスターブを倒してくれたぞ!」」」」

 一方、ピラミッドのふもと近くではワニ男と死神博士が内輪揉めの真っ最中だ。
「もうアンタにはとてもじゃないが付いて行けない! 今日限りショッカーからも退社だ!」
「なんだと? 神にしてやった恩を忘れたか!」
「アンタの野望のためだろうが! その為に大ワニに食い殺されて堪るかってんだ!」
「この大バカモノが!」
 ボカッ。
「あ、殴りやがったな、神を殴ったな? 神罰が下るぞ」
「貴様が神などであろうものか!」

 熱くなっている二人は、呆れて静まり返る群集の冷ややかな視線に気づいていない。

「噛み殺してやる!」
「うわっ! 何をするか!」

 ワニ男がその大きく強力な顎で死神博士に噛み付こうとしたその瞬間、群衆の中から一人の男が飛び出した!
「待った~!」
「邪魔をするな! 誰なんだよ、お前は!」
作品名:ナイルだ! ライダー! 作家名:ST