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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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うねりと、せせらぎと

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 その後、私は警察に事情聴取を受け、傷害致死の容疑が固まり、逮捕されました。私の逮捕を受けて、ジュディと組んでいたユニットは解消され、母や弟も私に電話をくれなくなりました。
 マスコミに至っては、「若きミュージシャン、良き父を殺したあまりにひどい女」、「不倫の果ての殺しか」などと、私の心にもないことをたくさん書いて大衆を煽っていました。私は、灰の中にたった1人投げ出されたような気持ちでした。

 しかし、裁判期間で留置されていたある日、私の夢の中に被害者が現れ、驚いたことには、私が立ち直るようにと、優しく励ましたのです…!

 自分に都合のいい解釈をしてるだけだろう、と非難する人も居るかもしれません。でも、私は罪を償う意思を固めて、裁判で懲役3年・執行猶予3年という判決を受け入れました。


 結審の日以降、私は、軽はずみな行いによって奪ってしまった命の重みを、一層強く感じるようになりました。その気持ちは言葉にならず、代わりに涙がこぼれるほどです。特に、ほかのミュージシャンがテレビでギタープレーをしているのを見た瞬間、涙が止まらなくなることもありました。
 赤ちゃんを連れた若い夫婦を見かけたときも同様です。もし被害者が生きていたら…と、即座に思うのです。

 でも、贖罪の気持ちを固めたとはいえ、被害者のことを思うだけでは、本当の償いとは言えません。罪の償いには、何をすべきかしら。自分にそう問い掛け、プロデューサーのサリバン・コーストさんとも話を重ねる日々がしばらく続きました。

 そして3月の初め頃、ある大きな出来事が起こったのです。


 私のもとに、何と遺族のサラ・スタインベック・シュルツ本人が訪れたのです。ティムが死んでしまった日から、私に悲しみと怒りに満ちたさまざまな言葉を投げてきた彼女を、私は恐れきった顔で見つめました。またいつものようになる…。そう思っていると、サラは思わぬ言葉をかけてきたのです。
「ロザリー、私、前にあなたに、『もう私とは関わらないで!』と言ったわよね…」
「え、ええ…。でも、どうして」
 すると、彼女は静かに語りました。
「実はあのあと、最愛のティムの夢を見たの…。それでね、彼は言ったわ。『小さな小さな俺たちの子に、恨みの心を植え付けちゃいけない』と…」
 途中から、彼女は泣いていました。私も、自然に涙が出ました。
「彼はあなたのこと、恨んでいないのが分かった。だから、私もあなたを…これ以上恨まない…」
 サラは、私をひしと抱きしめました。私は、彼女の態度の変化に、言葉が出ませんでした。

 しばらく私たちの嗚咽が続いたあと、サラは私の手を握り、私を見つめて言いました。
「ロザリー、私は強い心で生きていく。だから、夫の死を無駄にしないで、あなたも強い心で生き続けてね…」
 彼女の愛に満ちた言葉に、私はただただ涙をこぼしながらうなずきました。