「歴女先生教えて~パート2」 第六話
「絆・・・ね。家族って一番は親子だけど、兄弟や当たりまえに夫婦も気持ちを通じ合わせなければいけないね。これから私がやらなければならないことはみんなを幸せにすることだから、負けてなんかいられないわ」
「先生、そういう部分は年上の強みですよ。ご両親にも手伝って戴いて、素敵な家庭を作ってください。私も応援します。夫に代わりましょうか?」
「ありがとう。そうね、海斗に代わるから、あなたも拓真くんに代わってもらっていい?」
海斗は拓真に子供が出来たことを報告した。
何やら久しぶりに話すので長電話になっていたが、夏休みに会おうという約束をして電話を切った。
久しぶりに名古屋で高木たちと会った時には、陽子は大きなお腹をしているだろうと美穂は想像した。
「おはようございます」
美穂の授業が始まる。
「今日は初めての文明が生まれた地域の話をするわ。聞いたことがあると思うけど、メソポタミア文明よ。紀元前3500年ほど前にメソポタミアに史上初の都市国家を成立させたのは、シュメール人だった。トークンと呼ばれる絵文字を、葦や金属の筆記具で粘土板に刻み込んだのが楔形文字(くさびがたもじ)なの。これは刻み込まれた線が楔の形に似ているのでそう呼ばれたのね。最初は絵文字のような表意文字だったんだけど、やがて表音文字に変化した。シュメール人によって高い文明を築き上げたという事ね」
「先生、メソポタミアってどのあたりなんですか?」
「そうね、ティグリス、ユーフラテス川に囲まれた三角地帯のこと。二つの川はペルシャ湾に注いでいるから、このシュメール人が築いた都市国家は現在のイラクの一部に当たるところね」
「どうしてその場所だったのですか?」
「考えられることは人が生活をするのに恵まれた環境があったからだと思うわ。二つの大きな川に囲まれた肥沃な三日月地帯と呼ばれる場所が農耕に適していたという事ね。たくさんの支流を持つ大河が雪解けで運んでくる大量の水によって運河の整備などで十分に農業収穫が得られたの。現在と比較してもそれほど変わらない収穫量だったと言われているわ」
「エジプトはどうだったのですか?」
「文明的にはメソポタミアのほうが早かったの。世界で最も早くシュメール人の都市国家が作られ、農業や交易が発達した。エジプト人はメソポタミア文明に刺激されて、対抗意識から自分たちのエジプト文明を発達させたと言えるわ」
「だから使っている文字も違うのですね?」
「望月さん、そうよ、よく勉強したわね。エジプト文明のヒエログリフは楔形文字をそのまま使うことが癪だったから、改良したっていう訳ね。メソポタミアから文明は伝わったけど、国家として大きく成立させたのはエジプトの方が先だった。上エジプトと下エジプトを統一して紀元前3000年ごろ王朝が誕生した」
「先生、どうしてエジプトが先に大きな国家をつくることが出来たのですか?」
美穂はこの答えのためには、なぜメソポタミアに大きな国家が生まれなかったのかを説明しなければならなかった。
作品名:「歴女先生教えて~パート2」 第六話 作家名:てっしゅう