小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

自殺.com 【続きに煮詰まり中】

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
咲は、いつもの様に自殺サイト「自殺.com」にアクセスする。今日も一緒に死んでくれる仲間を期待して掲示板をチェックしている・・・
 
 ~一緒に死んでくれる人募集。練炭。薬。無痛系なら何でもOK~

 このスレッドに立てたのは咲である。
 だが、咲きの思惑に反して簡単には同士は集まらない。
 数日、暗がりの部屋に引きこもった咲は、画面を凝視しながら、ため息混じりにカレンダーを見る。カレンダーには5月20日にチェックが付けられている。
 と、そこへ掲示板に一件のメッセージが入った。咲は言いようの無い笑みを浮かべてモニターを見つめる・・・

ハンドル名 IS
件名 はじめまして
mail x1x2x3ha@x4suru.ne.jp
本文
こんにちは。以前から自殺を考えてるISです。
実は当方は既に他の自殺サイトで仲間募集してまして、3人ほど同士が集まっています。
もしよろしければ、咲さん含め4人で練炭自殺をしませんか?
詳しい方法と日時と場所要望を受け付けますのでメールをください。。


 咲は、警戒した表情を浮かべながらも安堵し、そのメールアドレス宛に、メールを送信する。場所は名古屋。5月20日、時間いつでも、と要望する。
 幾度かのメールの末、日時と場所は、彼女の要望通りの名古屋で決まり、集合日時と場所は5月19日の正午に決まった。
 咲はカレンダーの5月19日に×印を付ける。何度も何度もX印を付け書きなぐり。その場で蹲る。


ーーーーーーーーーー
 5月19日当日、咲は住み慣れたアパートを出る。玄関口からの中の様子は寂しい状態である。午前中だというのに日の光が入らないアパートの一室を見ながら咲は呟く。
「ーーーーー」
 咲は玄関を出て鍵を閉める。と、同時に隣の玄関が開き、幼稚園児と、その母が出て行きて、あいさつする。咲は、軽く頭を下げて足早階段を下りていく・・・道路沿いにあるゴミ収集所で、ゴミ出しをしている叔母さんに声を掛けられる。
「咲ちゃん、おはよう。今日もいい天気ね」 満面の笑みで挨拶をする叔母さん。
「おはよう」
 叔母さんの気迫に飲み込まれた様に小さく挨拶する咲。
 叔母さんは、両手に抱えた生ゴミ袋をさっと収集所に放り投げ、ズンズンと咲に近寄り目線を咲に合わせる。
「咲ちゃん、これから色々と大変だと思うけど困った事があったら、何でも叔母さんに相談するのよ」
 叔母さんは、そう言って優しい目で彼女を見つめ咲の尻をポンと叩いた。
 その勢いに押され体が前のめりなった咲は、転げそうになる。
「あっ! そうだ。咲ちゃんにコレあげる」
 叔母さんは、そう言って彼女の手をとり、キャンディーを差し出す。
「学校で食べる時は、コッソリ食べるのよ」
 咲は、叔母さんからキャンデーを受け取るとポケットに入れ、小さく礼をしてその場を立ち去る。叔母さんは、軽く手を振り、一仕事を思い出したかの様に駆けていく。
 周囲の人間にとっては彼女いたって普通に見えるのだろうか、世界の調和から外れている現実に誰一人とて気付く者は居ない・・・


~バス車内~
 彼女は、これから向かう駅で同士達と合流する事になっている。バスの社内は、朝のラッシュで人が多く、そこには、咲の知り合いも居た。
 知り合いは咲の中学時代の同級生であり、咲の存在に驚いて話しかける。
 知人が驚く理由としては、咲が学校へ通うのとは通常とは逆の方向へとバスに乗っている事にあるのだろうが、同時に旧友に会えた驚きもあるのだろう。彼女達は色々と咲に話し掛けるのであるが咲は話題を発展させない。唯、合図を打つように話を聞く素振りを見せるだけであり彼女には、旧友達の言葉さえ届いていない様である。
 結局、咲は、場の明るい空気を暗い状態にし、彼女らを不快と疑問を残してその時をやり過ごした。 
 しばらくして、バスから降りた彼女達は、その不快と疑問を話題のネタに会話を弾ませるのだが、バスから降りた直後とはいえ、咲にもその会話の冒頭だけは届いている・・・

・・・後、2つバス停を通過すると目的地に到着する様である。
 数分後、一つ目のバス亭でバスが止まると、集団の年寄りがバスに乗車してくる。
 年寄り達は町内会の集まりらしく、これから温泉旅行に行くそうで、賑やかである。
 ところが年寄り達は座る所が無いらしく途方に暮れている。
 そっせんして席を立つ者。それを真似て席を譲る子供。咲と目の合う老人。
 咲は目を背け、それに順ずる様に老人も目をそらす。が、他は誰一人として老人に譲る気配がない。罪の意識に触発されてか咲は、渋々席を譲る。老人は笑顔になり、彼女の表情も笑みが浮かぶ・・・
 
 数分後、子供が一人、次のバス亭で降りたいとブザーが鳴らしたい様子であった。
 咲は、ブザーを押せる場所が近かった為、代わりにブザーを押してあげる。
 子供は、嬉しそうにお辞儀をして駆けていった。
 その駆けていく後ろ姿をじっと咲は見つめる・・・

 数分後、突然、サラリーマンの風の男が、悲鳴を上げた。
「いで、いで、イテテテ!!!」
 サラリーマン風の男は、OL風をの女に痴漢をしていたらしく、OLは怒り心頭の表情で高らかに男の手を上に掲げる。
 それを見た乗客たちの白い目が一斉に男を串刺しにする。
「つい、出来心で・・・」
 男は謝るが手遅れである。
 謝った所で、状況が何も変わる訳でなく、バスは一旦、停車しタイムロスをする。
 警察が来て男を確保。
 「逮捕ご協力感謝します」
 警察のこの一言に痴漢を受けたOLは、「やったぜ!」という風なガッツポーズを見せる。
 
バスは駅へと到着し咲は降りる。バス亭前には3人組の男女が、バスに乗る事なく佇んでいる。
「やあ、もしかして君が咲さんかい?」
 3人組の一人、大柄の男が声を掛けてきた。
 この男が、この自殺グループをリーダーとして取りまとめいるIS氏であるらしい。
 その隣に居るのは、小学5,6年生くらいの男の子で名前をモト、その子の手を握っているのは4、50歳くらいの女で和子という。
 事前に容姿に関して説明を受けていた咲であったが、驚きを隠せない。
 というのも咲にとっては、自殺願望者を見るのは初めてだからだ。
 だが、皆は一見普通の人である。IS氏に限っては、まるで学校の先生の様な高圧的なオーラを出しているし、少年と叔母さんは、まるで普通の親子同士にしか見えない。
 なぜ、そうなるのか、そういうものなのか、彼女にとっては疑問であった。だが、それらは互いに聞いてはいけないというルールだった。
 IS氏の提案で他人の人生に同情していたら決心が鈍ってしまうという事を説明されていたからであるのだが、それは同時に自身の過去を詮索されたく無いという咲自身の思いもあり、その疑問心は彼女自ら封印しなければ成らないものなのである。
「はい・・・」
 咲はIS氏の挨拶に、一瞬の戸惑いの表情見せ答える。
 咲きを除いた3人は、待ってましたという風に笑顔になる。
「さあ、皆さん参りましょう」