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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~パート2」 第五話

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世界史の授業が始まった。

「前回まで、人類の誕生から現代人の祖先となったクロマニヨン人のところまで話しました。そしてメソポタミアなどで定住する生活、ドメスティケーションによって人類の生活が根本的に異なるものとなってゆくのよね。12000年から10000年ほど前のことよ。狩猟から自らの意思によって食料が生産されることによって、これまで無かった食料が余るという現象が生じてくるの。その食料は貯蔵されて富を生み、交易にも用いられるようになる。そこから貧富の差が生まれたのね。生産力の拡大は人間社会に、食糧生産に直接携わらない人々を誕生させるの。寄生階級ね。王や神官などの支配層や商人たちがそうよ」

「先生、その事への不満は生じなかったのですか?」

「そうね、農業や牧畜に携わっている人たちには不満はあるでしょうけど、交易のお蔭で、自分たちの作った作物がそれまで見たこともないような装飾品や農機具などに交換されることが喜びとして歓迎されたこともあったと思うわ。それにね、度重なる近隣諸国からの侵犯に対して守ってくれるという安心感が支配者階級への尊敬とかに変わってゆくの」

「熟成された相互利益の構図が出来上がってゆくのですね」

「望月さん、そうよ。寄生階級の人たちは生産をしないので、田園や牧場に住む必要が無いから、彼らが生活をする場所として都市が生まれるの。都市とは基本的には寄生階級の住む場所ね。この都市が出来て、そして国が生まれる。
自然を支配したい、自然界の原理も支配したいと、並外れた大きな脳を有する人類が考えたドメスティケーションという概念は納得できるの。新しい段階に入った人類は、5000年ほどの年月をかけて二つの社会に分化してゆくのね。メソポタミアなどの農耕社会と、北側に広がる草原地帯では騎馬の普及に伴って、遊牧社会が姿を現してゆく」

「人類はその遊牧社会と農耕社会との間で長く戦いを始めてゆくのですね」

「うん、そういうことになるわね。次回は最初に生まれた都市国家のことから話すことにする。これからがみんなが良く聞いた名前が出てくるから興味が増すかもしれないわね」

「エジプトとかピラミッドとかですね」

「人類はいろんな発明をしてゆく。それは生産階級からではなく、支配階級や寄生階級からもたらされたの。商業(交易)からも大きな発見や発明が生まれたわね。文字の誕生も必要からだったっていう訳。それではここで終了にします」

廊下に出て美穂は後ろから未海が走ってくることに気付いた。

「先生!待ってください~」

「未海ちゃん、どうしたの?」

「話聞いてきました。それでぜひ相談したいと思います」

「わかった。言いにくいこともあるでしょうから、学校じゃないところで聞くわ。新しく出来た図書館のホールに土曜日にでも来れる?」

「大丈夫です。お昼済ませてから伺います」

「そうね、じゃあ、13時に待っているわ」

美穂は話しかけてきた未海の表情から、あまり良い話ではないとの予感を持っていた。