詩集
愛着障害
父親はよその女性に
母親を病気の妹にとられて
愛されることを
知らずに育った夫は
妻をどうやって
愛すれば良いのかわからず
息子とどうやって
遊べば良いのかわからず
いま孫とどう付き合うのかわからない
愛された経験が無いこと
それに気付かず
おじいさんになってしまった
見返りを求めるのは一番嫌いだ
そう妻に言ったけれど
父に母に見返りを求めないように
生きてきたのかもしれない
見返りじゃなく
愛すること思い遣ること
こんなふうにしてくれたのは
きっとして欲しいことがあるんだなと
思い遣って
妻が嬉しい顔をするのを
楽しむことだって
出来たはずなのに
父に愛されなかったこと
父を恨んだこと
母に愛されたかったこと
病気の妹に母をとられたこと
我慢するしか無かったこと
そして何もわからないまま
気がつかないまま
同じ様な妻と結婚してしまった
貧乏の中で母親の愛を受けることが無かった
貧乏な家の養子であることから逃げ出した父親
兄が結婚をしたことで
家から逃げるように顔も見ずに結婚した母
姑と舅の両方からいびられ
親が大事の夫から優しい言葉もかけてもらえず
それでも3人の子を産み
その子が喜ぶことをしてやることが出来ない
その人を母にもった娘は
可愛くない子
その目がばあちゃんにそっくり
疎まれて育った
子どもに無関心な父
誰からも愛されることが実感できないまま
大人になったら家を出よう
そのことだけを思い
結局 職場と家から
逃げるような結婚をした
夫は言葉少なく
妻を愛することもわからず
娘は実家からの逃避であったとしても
30年という月日
夫に片思いしているような日常を過ごして
目が覚めてしまった
愛着障害の人は
愛着障害の連れ合いを
連鎖のように
見つけてしまうらしい
60才をとうに過ぎて
愛着障害と気付いても
今はもう気付いたこと
それだけで良いと思っている