レイドリフト。ドラゴンメイド 第28話 達美の告白
レースのような実践で経験を積んだわけではありません。実感などありません! 」
そう言って、カリスはひれ伏した。
『そう! それを自覚したら恥ずかしくて、意思が、旅立つ意思が失せてしまったのです! 』
それを見ていて、達美の心に再び火がついた。
変身はしない。
代わりにカメラの前で、モニターで自分の顔が大写しになるように、立った。
「みなさん、私の顔を見ていてください」
達美の頭の表面が。顔、髪の毛、猫耳から、ボルケーニウムがはずれていく。
液体となった皮膚や髪の毛は、ボディの隙間に流れて貯め置かれる。
中から現れたのは、骸骨じみた銀色のチタン骨格。
ひたいに手をあて、そこにある観音開きのハッチを開く。
「分かりにくいですか? 真ん中の赤みがかった白いのが、ネコの頭がい骨です」
画面の向こうの騒ぎが、あっけにとられたのか、止まった。
「耳と、目の所からコードが出てるでしょ? 」
そう教えたとたん、画面の向こうで悲鳴が上がった。
「それがサイボーグのマイクとカメラに繋がってる」
さらに悲鳴が大きくなる。
「わたしのお兄ちゃんは、あなた達を捕まえているポルタ・プロークルサートル社のCEO、最高経営責任者です」
それでも、達美の語りは止まらない。
「でも昔は、高校生ぐらいのころは、悪い奴にカツアゲされて危ない仕事をさせられる、不幸な科学者でした」
画面の中で工場長は、そんな達美を声を失ったように見ている。
「お金も無くて、近所の人には怪しい研究をする危ない奴だと思われていました」
そして達美の語りを、ワイバーンは目を伏せて聞いていた。
「そんな時、タケ君のお父さんの乗った車に、轢かれたんです」
それでも達美の声は、震えることもなく、静かに響く。
「その時、家まで運んでくれたのがタケ君でした」
その声には、喜びが確かに含まれた。
「今では、私の恋人です」
顔が、髪が、戻っていく。
「あなた達は、私たちを、そして宇宙の人々を恐れている。仕返しされるのが怖いんですね? 」
顔が、すっかり元に戻る。
「タケ君も、同じでした」
その顔は、微笑んでいた。
「それでも、今考える事とは違う未来があるかも知れない。その可能性を忘れないでほしいんです」
そして、外へ向かう。
「責任を取るべきなのは、誰だかわかるでしょ」
決意を固め、改めて、ドラゴンメイドに変身する。
「必ずあいつらを捕まえるから、待ってて」
その言葉は、どんなヒーローの変身ポーズより、怒りを込めた自信があった。
『日本の侍は、大罪を犯した仲間でも、腹を切って自死する権利を与えられるという! 』
と同時に、病室で一度はとどまった人々が、再び暴れ出した。
『自ら罪を裁かせることで仲間であることを示すため! 』
千田と仲間たちが押さえこもうとする。
そんな恐ろしい圧力にも負けず、懇願の声が聞こえてきた。
『ならば我々も、自死する権利を賜りたい! 』
確かに、生徒会同士で責任をとれ。と言う意味で、腹を切れ。と言ったことはあるかも知れないが。
『自分たちの手で、考えなしの科学者たちを退治したい! 』
外に出たドラゴンメイドは、自分の視界を病室へ送った。
「気持ちはわかります。でも、私の目で見てください」
次の瞬間、さらに大きな驚きの声が震えた。
『山脈が! 消えてゆく! 』
作品名:レイドリフト。ドラゴンメイド 第28話 達美の告白 作家名:リューガ