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一歩も外に出られない

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いきなりだが、引きこもりで一歩も外に出られない。本気で言っている。対人恐怖気味だと実感してからここ20年、「一歩も外に出られない」問題は、私と家族を散々苦しめてきた。周囲の人達に話したことはない。世間体が気になって軽々しく言えやしない。いつも仕事にいそがしく出かけて家には今いないとウソをつく。嘘をつき続けて40歳だ。
何も知らない親戚たちは、「付き合いが悪いだけなんだろう」と誤解し、いつしか家にも近寄らなくなった。しかし皮肉なことに嘘をつかなくて良くもなったのであるから、私としても家族としても楽なのである。親戚の子供が遊びに来た時、電気を消して物音を立てないで押入れに隠れている私の生活スタイルを両親がどんな気持ちで支えているかを考えると、いたたまれなくなっていたから。
だからといって私が人より不幸だと言いたいわけでない。今の時代はネットが充実しているわけで、外の世界の人生を諦めたとしても、そこそこ楽しめる娯楽は沢山あるわけで。だから世界のもっと不幸してる人々と比べれば幸せであるから、私も両親も深くは考え過ぎずに、植物のように淡々と生きていくことを不本意だが選んだ。


最初に人を怖がったのは物心がついた頃だろうか。親戚の寄り合いで従兄弟の存在に気づいたとき、物凄く緊張して対面する前に、逃げだしたことを思い出します。それまでは法事や正月等で一年に数回程度は会っていて、何気なく付き合いをしていた筈で、その光景は思い出のアルバム写真にしっかり証拠として残っている。その写真に写るとても明るい顔をした私について、今の私がそれを見ても、過去の自分があたかも他人様にしか見えない程に自分との繋がりの無さを実感するわけで、本当は両親が実の生みの親ではないとさえ思ってしまう自分がいる。

勿論、正真正銘の実親であり、だからこそ愛に溢れてて 一歩も外に出られない私を支援してくれている。嘘にも付き合ってくれる。愛情がなかったら今頃外に放り出されているはずで、死んでるはずなのです。
追い出されて即死を受け入れる心理にはリアリティがないのではと思う。私自身、引きこもり生活15年目くらいまでは、家を追い出されたとしても即死の思考回路には至っていなかった思うから、その頃はまだ普通の視点が私にも存在していたということになります。
その普通だった視点が何故いまになって「捨てられたら即死」に至るかというと、実は私にも原因が良く分からないので、何ともいえないのですが、しかし、ひとつ断言できることがあるとするなら物心ついた頃の従兄弟たちに感じた強い緊張感がどんどんエスカレートしてきて「会うくらいなら死にたい」レベルまで発展してしまった。ということぐらいです。

「会うくらいなら死にたい」と思わない相手を探すのは難しいくらいです。芸能人やアイドル等の特殊な人種を除せば、誰に会う場合も死にたいと思うに違いありません。引きこもり支援団体等なら、もしかしたら大丈夫なのかもしれないですが、まずもって連絡をとること自体が大きな壁になっていると思います。 「会うくらいなら死にたい」は「会うかもしれない時点で苦痛している」と私は解釈しています。なので電話がかかってきたり、玄関のチャイムがなったりすると、緊張感で心臓が麻痺するかと思うほど高鳴り怯え、部屋に隠れます。セールスマンや新聞の勧誘が来ると困りますので、我が家のチャイムは外しています。

実は心臓が麻痺するかのごとく緊張感は親に対してもあります。たとえば父親が親の介護でしばらく実家へ帰ったことがあるのですが、帰ってきたとき、家にいるとき常にわたしは緊張感で死にそうになっていました。伝えたら出て行ってくれるのでしょうが、当時の私は親を拒む感情が人として残念なものだと、おもってしまっていたので、苦痛に耐える日々を選んでしまいました。すると次第に親に対する憎悪かを芽生えはじめ、日々を重ねるうちに恨みがエスカレートしていき、1年もしないうちに親を殺したい感情にまで発展していきました
その時の私は殺意を押し殺して生活していたので、いつもイライラしていて、やつあたりに物への破壊衝動が止まりませんでした。
しかし、物に当たれば音が響きますし、両親を睡眠から起こしてしまいますし迷惑になります、とにかくエロい事を考えて気を紛らわしていましたが、しばらくして、それも耐え切れなくなり家出の決心をしました。離れの家ですが、家電もキッチンもあり、近くにコンビニもありますので、生活が可能に思いました。全財産が10万あり、無くなれば死ぬつもりで家出しました。その頃には父親の気配を感じるだけで死にそうになっていたので、とにかく逃げ回る生活をすることになるのですが、相談なく無断で離れに引越してるし、父親は私にコンタクトをとろうとしてきます。窓の外を見ると時々居るので、そのときはカーテン閉めてブレーカーを落とし存在の痕跡を消しますので、程なくして去っていきます。

この頃は母親の協力もあり、家事炊事の援助をされるのですが、離れと自宅を行ったりきたりするのは面倒であり、また私が外出が怖くて逃げ続けて餓死しかけていたので、心配をかけてしまったのですが、母親は今の私の症状が異常なのだとおっしゃるので、「たしかに異論の余地がない」と考えた私は、外に出られないのを正当化するようになりました。つまり、外に出る必要のあるあらゆる仕事を全て母親に任せるとともに、父親を避ける行為も手伝って貰うようになりました。

手伝って貰うようなったことで、精神が安定したのか、父親に対する殺意は無くなりましたが、ときどき携帯のLINEのメッセージが来ることがあります。既読したら返信しないといけないので、既読しないままスルーしているのですが、メッセージ受信中は携帯のランプが点滅しているので、常に父親の気配を感じてしまいます。なので、やはりメッセージが届く度に苦痛で、殺意との格闘になるので、エロい事を考えて気を紛らわしています。

私としては程よい距離感なのかもしれない。殺意とも共存できているので心に余裕があります。こうしてエッセイを書けるのも、その距離感のお陰なのですが、やはりふと将来的な事を考えしまいます。
裕福な家庭とは微妙に違い、離れの家は祖父の代に借金で建てたもので、返済が待ってます。貯金は増えないので、親になにかあったとき、は死なないといけません。

どうしたら解決するかなんて、誰にも分からないのではなかろうか? 家族以外にも私の引きこもりを支援してくれる人がいれば良いのだろうけど、そういう思考回路はきっと望まれてないのが分かってる。
引きこもり支援団体も家から出すのがスタンスだし、家にいることを尊重する価値観は一般的ではないと思う。
在宅勤務など、家にいながらでも仕事はあるのだろう。探せば内職程度の仕事なら、あるのだと思う。今まで憎悪に取り憑かれて思考に余裕が無かったけど、妥協しまくって超低賃金で生きる道だってあると思う。世界の平均賃金は日給200円だし、1日200円さえ稼げば人並みに努力したのだと自分に言い聞かせられるかもしれない。自尊心も保てるかもしれない。
作品名:一歩も外に出られない 作家名:西中