残念ながら
「…まさか、アレが全部、お腹の中に収まるとはねぇ」
都さんは、空になった豆狸のカップに 紅茶を注ぎます。
「中々の大食いだね。豆ちゃん」
紅茶のポットを手にしたまま、都さんは問い掛けました。
「で、どうだった? 私のクッキー」
「美味しかったです!」
元気に答える豆狸に、満足の笑顔を見せる都さん。
「─ じゃあ…これで豆ちゃんの恩返しは、無事終了と言う事で。」
「でも…単にクッキーをご馳走になったのを、恩返しと言う訳には…」
困った様に呟いた豆狸の目を、都さんが覗き込みます。
「ストレス解消で大量にクッキー焼いたら、私 また困ると思うんだ…」
「…」
「─ 連絡するから、豆ちゃん…また来て?」
「え?」
「そうしてくれれば、私も安心してクッキーが作れて…助かるんだし!」
「でも…」
「助かることをしてくれるのが…恩返しでしょう?」
豆狸は都さんに、遠慮がちに確認しました。
「そんなに、ストレスが溜まる生活…してらっしゃるんですか?」