残念ながら
「恩返しに伺いました!」
開いたドアの向こうには、少女が立っていました。
閉じないように扉を押さえた都さんが、少女を見下ろします。
「…思い当たる行動を、した覚えがないんだけど?」
「100年ほど、前の話です」
「─ 残念ながら私…そんなに生きてない」
顔をしかめる都さんを、少女が仰ぎ見ます。
「私の曽祖父が、助けて頂いてます」
「もしかして…うちの曾祖父ちゃんに?」
頷いた少女と目の高さを合わせようと、都さんは しゃがみ込ました。
「…何で、今頃?」
「私が生まれて…成長するまで居なかったのです」
「?」
「恩返しに伺える、メスが。」
「…は?」
「メスが恩返しに伺うのが…うちの一族の決まりなんだそうです」
顎を引いて軽く背を反らした都さんは、少女の全身をマジマジと眺めます。
「人じゃないんだ…」
「豆狸です。」
「─ 上手だね…化けるの。。。」