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「大事にしなさい。でも、それだけにしがみついたりはしちゃだめですよ。貴方、ただでさえ一つの物事に入れ込みすぎるんですから」
もう一度静かにうなずく。胸元をかきむしる。そこにあるのは温かさと同時に以前より増した切なさ。でもそれだけではない思いもまた、確かにある。
「アルス。いえ、サーレス。貴方はおっしゃいましたね。幸せになってほしいと。私も、幸せになりたいですよ。そしてできるならわずかばかりのこの幸福感でも、他の方に伝えたい。私は、自分が破滅をもたらすだけの存在であるとは、思いたくありません。無理な、話なんでしょうか」
サーレスは明言しなかった。
「確かに、僕は貴方をそういう風に作ってしまった。でも、前も言った通り、僕はそれを過ちだとは思いたくありません。過ちだと思ってしまったら、貴方の存在も否定してしまう。だから、信じてます。そんな運命だとしても、それでも貴方なら、越えて行ってくれると、今は信じてます。貴方の行動次第、ですよ。きっと」
ヴァシルはその街を後にした。二度と関わるまいと心に決めて、違う世界を目指して歩み始めた。