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生活保護受付窓口から

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オレはいわれるがままサインした。親指印も必要らしく、朱肉を指につける

「弁護士雇うなら、連絡するから、こちらに弁護士の名前書いてね」

と、いわれても、知り合いの弁護士いないし

「無しって、書く事もできるけど、お金ないなら、こちらで国選弁護士つけるけどいい?」

オレはとりあえず同意した。かねがないのは事実だったし、でも、金があるかどうか、この人らはどうやって判断してるのだろ?
嘘こいても分かんないだろこれ

そうこうしてるうちに
医者らしき白衣のおじいさんに
身体測定、体重測定を受け聴診器を当てられる

「えーとね。これから入るところの説明に入る前に、エイズとか持病があるなら、申告しておいてほしいのだけど、そういうのある? 無いならこれから君は番号で呼ばれる事になるのだけど、あと中の人も同じように呼ばれているけど、、あまり喋らないように。わかってると思うけど、なんらかの犯罪に関わってる人だから」

うなずくと

「じゃあ、ここでは君は3番だから。さあ、3番、前に進んで」

ロープにつながれたオレはいわれるがまま前に進んだ。

フロアのサイズは学校の教室3つ分くらい。しかし教室のような温かみのある風景じゃなくて、コンクリートの床。
檻が3あり、その全ての檻が奥まで吹き抜けていて廊下が見える
畳6畳ほどの広さに左右がコンクリートで囲まれていてる。長年のカビや汚れで真っ黒に変色したコンクリートである。

その真ん中の檻の中にオレは
いれられた。

既に誰かが檻に入ってる。挨拶はするべきだろうか。少しだけ目があい、小さく礼をされた。その後男は背中を向けて檻の外を眺めた。

少しすると、先程の警官がやってきて、「これから検事局に行くからトイレ済ましておきなさい」

檻の中にあるトイレ
床が木であり突起のない和式。ややスエった匂いがした。
小はいいけど、大が大変そうだな

檻からでると、また口の中の中を調べられる。警棒で体をなぞられる

警官「これは警棒じゃくてね、金属探知機ね。たとえば君が凶器を隠し持ってたら反応するから」


検事局

検事局はエアコンがきいていた。
何をしたのか一通り聞かれた。
脅されていろいろとやりたくないことをヤやらされた。実は被害者なのだと正直に答えたつもりだった。

でも、オレは浮かれていた。護送車もココも警察署も、美味しいお茶を出してくれたり、部屋も涼しいし、言葉遣いも丁寧で、正義感に溢れんばかりのカッコイイ人らをたくさん見てきたから、

ワクワクしたり、嬉しかった。だから印象がラリって見えたのかもしれない。ほんとうはヤクザとグルじゃないかとか、ヤクザの潜伏先を教えなさいとか言われ
誤解され
拘留期間を延長され、
再び檻に戻された。

頼みの綱は弁護士しかいない。ほんとうに助けになるのか、冤罪を晴らしてくれるのか。
弁護士は一通りの話を聞くと、証拠が必要になるからと、脅されていた証拠があるかと聞いてくるので、

俺は___


問題《脅された証拠はどんなものか? 「」を埋めなさい》


オレは

無い、と答えた。
証人になりそうな主犯のヤクザも人質もろとも、どこかへ消えてしまったし、エイリアンみたいなのをちらっと見た気がするが気のせいだろうし、

弁護士は印象で勝つしかないといって、スピーチの練習が必要だという。

ふに落ちない。練習なんかしたら、取り繕った感じになって、不自然になって、余計に嘘こいてるみたく裁判官に見えるかもしれない。

考えたけど答えは出なかった。スピーチ練習している間、弁護士はヤクザに証言して貰うべく、搜索に向かった。

警察署に戻り、ご飯待っていた。便所どなりであることを除けば、ウマイ飯だ。
同じ檻の中の男は、オレに気を使ってるのかもしれない。便所に一番近いところでご飯を食べていた。

きっと檻の中で、怖い体験をしたのかもしれない。少しだけ話しかけてみようか、いや、でも、なんてかけようか。もっとこっちで食べたら? なんて気の使い方、使われた方としては、弱い象徴になるし、プライド高かったら、嫌だろうし、肉食系ホモだと思われるのは面倒だし、

オレはとりあえず、何も考えずひたすら漫画を読んだ。留置所は檻に閉じ込められるマイナス分、人権を配慮してか、一定の娯楽が保証されているようで、オレは気を紛らわすように漫画を読んだ。

だけど、それが良くなかった。病んだ心だと漫画の刺激は通常の何倍もあるということを知らなかった。冤罪になりかけてるのを忘れるくらい、漫画で幸福して、泣いてしまった。

通常の精神状態ではない。このまま取り調べや尋問を繰り返しても、挙動が不自然になるだけで、言葉遣いに説得力をもたせられ無い気がした。

案の定、警察官はオレの言葉の9割をスルーして、「事情はどうあれやったんだよね」という言葉を使ってきた。

確かにその通りで、ヤクザを拒むことも、断固対応することも可能だったかもしれない。弱気に流されて、結果として逮捕されたけど、警察官の言い分はまさに真実で、オレは強盗が成功するように頑張った訳だから。

だけど、そこ認めたら、ヤバイ気がする。漫画で癒される希望を胸に、なんと自白に耐えたのだった

その日はなんとなく、人肌が恋しかったから、少しだけ檻の中の男に話しかけてみた。寝るときも男は便所の近くで、いたたまれなかった。

だけど思わず発した言葉は、そっちにいっていい?

疲れてて、かえって気を使わせてしまった。警戒されて「どうして?」と聞かれて、寂しいって答えるわけにもいかず

正しくは「こっちに来たら?」で、「どうして?」と、聞かれたら「便所のところは気分わるいでしょ。こっち寄りなよ」と言えば良かった。

いまさら言うのは不自然で、もんもんとし眠れなかった。向こうもあれこれ考えて眠れなくなっているとしたら、申しわけない事をしたと思う。

でも、この男、何をして捕まったのだろうか? 新聞に載っているなら、明日朝、詳しく調べてみようか。

天井眺めて朝を待つ。電気は消えることはない。看守いわく、自殺者がでるから、常に監視してないといけないそう。息してるか確認する為に布団を顔まで被ってはいけないらしい。明るくて眠れないが、隣の檻からイビキ声が聞こえてくる。
どのみち眠れそうにないな


朝、いつものようにまずは掃除の時間。看守が檻の周りに掃除機をかける。バケツに雑巾とほうきを渡され、檻の中を掃除する。今日は俺が雑巾をやる。なんとなく昨日の事もあるし、3日連続でトイレ掃除やらせるわけにもいかない。しかし、雑巾でふくと手が臭くなる。便器ではなく、周りの床とはいえ性病うつされたら困るから、今度から振りだけにしとこう。
作品名:生活保護受付窓口から 作家名:西中