3月になると思いだす
温かい時もあり
冷たさを感じる時もある
学び舎に吹き付ける風が
透明なガラスに遮られ
音だけが
風の存在を表現した
教室は暖かな空気であるのに
花束が生徒たちの机に置かれているのに
その温かさや
花の美しさは
この時間
時を待つようにためらっている
「さようなら、それぞれの人生頑張れ。さようなら」
もちろん
泣きたい感情が湧く
生徒の方がさっぱりだ
分かっているさ
泣くのはしまってあるんだろうって
本当に
俺は憎まれているのかな
憎まれるほど真剣だった
教室を出ると
生徒が追ってきた
「思い出写真」
アルバムを観れば
あの時のまま
あの時のことを
3月になると思いだす
歳を重ねた分
あの、ときの
なみだがあふれる
作品名:3月になると思いだす 作家名:吉葉ひろし