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ヘンテコな出だしから始まるはなし

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へこたれずに死ぬ
屁こたれないから、美しい
それこそが賛美歌

あの人は言った。だからこそ貴方らしいと
私にとっての貴方は貴方の中に存在している
私の中には存在しない
とても切なく
それはいつでも最上の喜び

どうするべきは判ってるから目覚まし時計に電話をかける
あくまで留守電だから

女は一人交差点をゆらゆらと歩いていた。人通りの無い時間、彼女は今から自殺の予行演習をする。
どういう覚悟でとびこむか、どんな車に飛び込めば一番被害を少なくてすむか。
できれば死にたくないがあえて車にひき殺されたいその願望は彼女が自らの恋人をひき殺してしまったことに原因がある。

彼女の恋人は3歳年下の大学生。名前をホン。生まれて直ぐの頃、両親につられて韓国から移民してきた。彼と彼女は友達を通じて合コンで出合ったのだが、その時はまだ彼も彼女も互いに一切の好意を持っていなかった。
二人が互いに好意を持つようになったキッカケは電車での出来事。
元来、ホンも彼女も人見知りが激しい性格で、その激しさといえば知り合い同士であっても話しかけない。
話しかけられるのは幼馴染の様な親密な関係である相手しか無理で、それは互いの過去のトラウマが起因してる。
二人は互いに相手の視界に入らないように勤めていた。目があってしまえば、知り合いなのだから無視する訳にはいけない。彼女も彼も互いに何を話せば自身の緊張が解れるのかそれればり考え相手からの接触を拒否していた。
電車は進み乗車客は皆降り二人だけになった。
長い沈黙が二人の中を支配した。
互いの距離は凡そ4メートル。二人とも窓の外だけを見ている。
3つ4つの駅を進み、日が暮れた。しばらく田舎の道で駅のない路を走っている。暗がりで外を見ても何も見えない。
二人ともそれでも相手が気付いてないという前提で外を見続けた。
次の駅の次の駅で彼女は降りるつもりだったから少しの辛抱、そう考えて彼女は待ち続けた。
次の駅がきたとき、駅のホームから3人乗車してきた。一人は見るからに汚らしい老人で、もう一人も汚らしい老婆。見るからにホームレス。
もう一人は制服を着た小学生くらいの男の子
時刻は夜の8時をまわっている。塾帰りの子供であればささほど不自然な光景ではなかった
子供が居ること自体は違和感がないが、その子供が少し違うのは何も手に持っていないこと。
塾帰り。あるいはどこかに行くにしても何も持たないという事はあまりないだろう。完全な手ぶらで電車にのってきた。
もう一つ気がかりな事があるのは、その男子は恐らくホームレスだろう老人2人の手を引いて誘導してきた。まるで子供の手を引く保護者の様に…
その光景に注意を引き付けられたのは彼女だけではない。
彼女から少し離れた彼もまた3人について、いぶかしげな目を向けていた。
3人は一箇所にあつまり席に座った。その場所は彼女の直ぐ右隣りだった。
彼女はなぜ他に座らないのか疑問した。人まばらで椅子は空いてる。もっとスペースを空けて座ればいいのにと
対人恐怖症に似にた人見知りの激しい彼女は、下らない事を思考する自分に嫌気して、車両最高列目に移動した。移動の際、彼と少し目があった気もしたけれど、気を張りすぎて疲れた彼女はどうでも良くなっていた。
彼もそれは同感だった。彼は彼女と目があったとは思わなかったが、つい動く姿に視線を合わせてしまった。見るつもりはなかったけれど、もし目があってたと思うと…
彼は自身が彼女を意図的に無視してるのだと、彼女にそう思われる事を不安した。軽蔑な印象を持たれたのではないかと
彼にとっては全ては3人組みが彼女のそばに座ったから起こった問題で、それがなければ目を向ける事も無かっただろうから
彼もこの場にいると居心地が悪くなり、彼女の一歩手前、最後列車両の手前の椅子に座っろうと歩いていった。
時刻はちょうど8:15。彼はふと外に何かの気配を感じたが、気のせいにして特に気には留めなかった。
彼はそのまま車両4目に進んだ。車両と車両の間のつなぎ目、連結部分の上に彼は居た。
連結部の隙間に何かが挟まってる。万年筆? 
引き抜こうしたけれど頑丈で無理だった。彼は特に気には留めずそのまま車両扉を開け進んだ

直後、見た記憶ある人の姿。高校時代の嫌な友達。自身をさんざん虐めた相手で、正直、死ねばいいと思う相手。。
彼にとっては何一つ正当化できない過去の汚名であり、それを知ってるその者が居るだけで不安材料であり存在が許せなかった。
その強い思いは表情はに現れていたのだろうか。なれなれしく肩を腕を乗せてき旧友は絡み始めた。
髪をいじられ、しばらく彼の顔をまじまじうかがう。旧友から目をそむけようとする彼に対して、旧友は舌打ちした。

旧友はちょうど、車両4番目扉側を背にして、中央の廊下に座ってる。その下に彼が居て、馬乗りされ殴られつづけていた。。
誰も居ない車両にスリルを感じたのか、旧友はとにかくコブシで腹を殴り続けた。次の駅まではあと5分。
彼も必死で抵抗はしていたが、舌打ち直後に一発をくらったのが急所を直撃していて、動ける状態ではなかった。
次の駅まで後2分、彼は意識が朦朧としていた。腹がどこにあるのか判らない。麻痺をしている様な。横隔膜がやれていて声を出す事ができない。

気付いたら彼は意識を失っていた。しばらくの時間、どれくらいたっただろうか、ふと周囲に目をやると暗闇状態。
今はいつで、ここはどこだったか、と思いをめぐらして、少しづつ記憶が定かになってくる。
彼は思い出した。殴られていたあの時、突然、旧友の体はふっとび、ぐしゃりとなった。車両扉のガラスに内臓がぶちまけられた。
電車の衝突か脱線事故か何かで、とにかく自身もそれに巻き込まれたのだと悟った。
悟った瞬間、尋常でない疲れが襲ってきて彼はその場に倒れこんだ。
衝撃のせいか目の焦点があまり合わない。頭がくらくらして吐き気をもようしながら



彼女の名前は玲子という。電車の脱線事故に巻き込まれていた。彼女は最後尾の車両で最も被害の少ない状態だった。周囲には誰もいなく、被害者もいない。
前方車両に何人か居たことを思い出し助けにむかった。
前方車両扉を抜けると連結部分が外れて外が見えていた
玲子は外に降りて、前方8メートル先に斜め横になってる車両扉まで向かった。
4両目に乗り込み、韓国人のホンを見つけた。容態が重症そう。
彼女は直ぐに電話をかけて助けを呼んだ



この事件の概要は死者3名。重症1名。不明者一人だった。
ホームレス二人と若者一人が死に、ホンと玲子は助かった。2人が目撃したとされる少年はいくら捜索しても遺体が見つからなかった。
事件直後に一人でどこかへ行ってしまったのか、事故の事情聴取を取る為に警察は少年を捜したが、確認する事はできなかった。
ホームレス二人が電車に乗り込む際に手を引いていたという少年はホームに設置されていた防犯カメラに記録されていたかった事もあり、警察は目撃者の見間違えだと見解し捜査を打ち切った。


玲子とホンは事件をキッカケに仲良くなった。子供の存在を認識していた二人は話題に花を咲かせたのだろう。