「親はデブと甲斐性なし」
手錠をかけたあと私をどこかしらに監禁して慰み者にでもするのだろう
男の言葉が本当で、私を信用しているなら手錠は掛けようとはしなかったはずだ。
強姦撃退用の催涙スプレー、出かける際にいつも携帯している。これまで役に立つ事はなかったが、まさかこの刑事に使う羽目になるとは…
やるべき事はスプレーを使い怯んだ隙に手錠を奪い、刑事の腕を拘束する。その次に刑事の車に乗り込み、ひき殺す。ちょうど海だし、死体と車を捨てよう
途中まで実行して、私は気付いた
この刑事の足取りを警察が調べると私にたどり着くかもしれない。車にGPS等の追跡装置がついてるはずだ。そんな車を即海に捨ててはいけない。
この刑事は殺せない。少なくとも脅して、証拠隠滅に協力させないと。
私は刑事にトドメを指すのを辞めた。倒れた刑事を車に乗せて、意識を確認する。
幸い息がある。
「内蔵を引きずり出されたくないなら言う事聞け!」
しかし応答はない。息はあるが、意識不明の重体という事かもしれない。
今から病院に運べば助かって、罪は軽くなるかもしれないが…
私が父親殺しの犯人だと母親が知るとすれば、私は究極の親不幸者だ。
私は、どうすればいいのだ?
父親は殺すべきではなかった。カッとなったとはいえ、いつもなら冷静になり、自制できていた筈なのに
なぜこうなった?
なぜこんな結末になった?
後悔の涙を流す私
今更、どうにもならない。誰にも救えない。不条理を噛み締めて私はただ泣く事しか出来なかった……
作品名:「親はデブと甲斐性なし」 作家名:西中