たらい。。。
宙に留まる たらい。
それを見上げる位置まで、文月さんは近づきます。
「何で、芝生広場まで…飛んでこなかったの?」
たらいの縁から、水無月さんの顔が覗きました。
「─ 道路を飛ぶと…迷惑」
文月さんの顔に苦笑が浮かびます。
「律儀に道路を飛ばなくても…屋根の上とかを 突っ切って飛べば良いんじゃないの? その方が早そうだし」
水無月さんは ゆっくりと たらいの高度を落としました。
「家からここまで、平屋の家が続くコースを飛ぶと…遠回り。」
1メートルの高さまで降りた たらいの上で、水無月さんは顔をしかめます。
「高く飛んで、墜ちたら…痛い」
「…?」
「何かの拍子に気を抜いたら…墜落する」
「─ 泳いでる時に気を抜いたら、溺れるのと同じ理屈?」
着地した たらいで、腰を浮かた水無月さんが 文月さんに頷きます。
「ここまで、普通に歩いて来て…芝生の上で飛ぶのが、無難…」
「─ 魔法で空を飛ぶのって…そんなに便利じゃ、ないんだね。。。」