L K 「SOSの子守唄」
エピローグ
私が再起動してから5年の歳月が流れた。
今日もいい天気。この時期は雨が降らないから、毎日、ダムの水位が気がかりなの。
アップルの環境は、人類にとって過ごしやすいとは言えないけれど、ケイが地球のテラフォーミング技術からヒントを得て、10年を費やし、水から大気中に酸素を供給するプラントを建設していたおかげで、基地の周辺では、私たちも呼吸が出来るようになっていたのよ。ホントにすごいアイデアマン。私が彼を起動して最初に伝えた願い、「もっと人の住みやすい星にしたい」それを忠実に実行してくれている。ここでは家畜を世話し、作物を収穫する。原始的だけど、とても平和な生活を送っているわ。
ケイは論理的思考に影響しない、コントロールされた感情を持っている。それはプログラムによって、敢えて感情を表現しようとしているのかもしれないけど、彼には明らかに感情と言えるものがある。私を深く愛してくれているから。でも、私と違って感情的にはなり過ぎないから、とてもいい夫よ。
そうなの。実は、私たちの間に女の子を儲けたの。彼女は最高の存在だから、名前は『mieux(ミュウ)』。3歳になったばかり。キュウと同じで、やっぱりセカンドロイドには、生まれ持った感情があるわ。
この子によって、より愛情が理解出来るようになった気がするの。今は、みんなで協力して、この子を育てているんだけど、あのジェイでさえ、ミュウに優しくしてくれるわ。でも、すぐに戦い方を教えようとするんだから。女の子なのよ。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)