L K 「SOSの子守唄」
今、私は混乱しているようだわ。感情を理解し始めたとは言え、私自身、本物の人間の感情を知っているわけじゃないから、アンドロイドに感情が芽生えても、どんなふうにそれを育めばいいのか分からない。人間ならそれが分かるんじゃないのかしら。
「教えてちょうだい。あの船には、人間は何人乗っていたの?」
「いいえ、外宇宙のミッションですから、あの船のクルーは、全員アンドロイドです」
「そうだったの。ジェイはこのことを知っていたの?」
「俺は、起動されたばかりだから、そんな事情は知っちゃいねえよ」
なんてこと? まるで、人間そっくりだから分からなかったわ。ケイも知らなかったはずよね。太陽系司令部から、詳しい情報が提供されていないから、私が知ってる時代とは、かなり状況が違ってるわね。
ケイのアドバイスが必要だわ。彼なら科学的見識で、私を安心させてくれる。
私はここで、ようやくケイに連絡を取る時間が持てた。こちらの状況と、セカンドロイドの驚きの事実を報告したけど、ケイ自身もSS3200型アンドロイドだから、何も驚くはずはないのね。このメッセージがアップルに届いて、返事が返ってくるのに、先進波通信と言えど、3日はかかるわね。
そうしていると、私宛の太陽系からのメッセージを、受信していたことに気付いた。ケイのメッセージばかり気を取られて、見落としてしまっていたわ。やりたいことを優先して、その他の作業をそっちのけにする、私の悪いクセね。そのメッセージは、アップルを出発した後、すぐに受信していたようだわ。
『新型探査船の救難信号は誤報である可能性が高い。事実としても危険であるゆえ、無視せよ。既に救助を開始している場合、アンドロイドはすべて、機能停止させよ』
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)