L K 「SOSの子守唄」
第五話 再出航
「航行速度は、出力70%を維持してください。それ以上では、船体剛性を保てる保障がありません」
「それでは、時間がかかりすぎるわ。どうせ眠ったまま行くのだから、爆発しても気付かないわ」
ケイは、あきれた顔で静止したあと、口角を上げて話を続けた。
「救難信号に添付されていた、最新の星図にある恒星をスウィング・バイすれば、滑らかな加速が得られますので、約2年半で目的ポイントに到達出来ます」
「それなら、救助に十分間に合うわね」
「まだ、生存者がいればの話です。それに事故ポイントには、亜空間断層があるようです」
「それをジャンプしようとしたのね」
「新型船の船体には、エネルギー防壁を展開出来ますので、亜空間の亀裂も越えることが出来るはずです」
「今までは問題なかったのに、どうしたのかしら」
「それはきっと、エルが作成してきた星図には、断層を避けたルートで記載されていたからでしょう」
「未知の宇宙域に入って、初めて亜空間断層に出くわしたけど、甘く見たのね」
「エル。本当に私のサポートがなくても、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、もう一体のアンドロイドを連れて行くから」
「そのモデルは、ミリタリーモデルですので役に立ちますが、私のような“やさしさ”は、持ち合わせていませんよ」
「・・・? あはは。驚いたわ。冗談が言えるようになったのね」
「はい。考えておきました」
「それを言ったら興ざめだけど」
「それと、タックも同行させてください。彼もその方が嬉しいはず」
「それじゃ、あなたの方が一人ぼっちになってしまうわ」
「いいえ。ニワトリやブタの方が、賑やかです」
「はははは。確かにそうね」
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)