L K 「SOSの子守唄」
その後、二人で話し合って決めたのは猫の名前。とても難しかったわ。なかなか意見が一致しないのだもの。
結局、32時間を費やして、私たちが納得した名前は、『タック』。CATを逆さから読んだだけ。提案したのはケイだけど、そのアイデアに私は笑ってしまった。
ケイは論理的に動く。タックの自由奔放な行動を、計算しようといつも観察している。ケイの話だと、私の行動の半分は予測不可能。それは人間の行動にとても似ているらしい。どうして私には、人間性がプログラムされていたのか。それは、ケイにも分らない。遥か彼方の知的生命体に、人間というものを理解させるために、身代わりとして私が必要だったというの? 危険なミッションにアンドロイドを送るというのは理解出来る。だとすれば、私は使い捨てだったのね。
一人で船に乗っていた時は、感情と言ってもマイナスのことしか感じていなかった気がする。それは与えられた任務をこなすだけの日々だったから。新型船で来たクルーたちも、仕事をこなす毎日で、感情が希薄になりつつあったのね。
でも私は、この星に来て、希望や楽しみを知った。自分の意思で何かをするということは、とても意味のあることなんじゃないかしら。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)