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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 「SOSの子守唄」

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第九話 子守唄



「アッシュ、どうして、男の子を起こすの?」
「この子守唄を、止めようと思ったのです」
「そんな必要ないわ」
「すみません。もう起こしてしまいました」

 私は男の子に駆け寄った。その子は怯えた表情をしている。
「大丈夫よ。助けに来たの。安心して。この船は安全だから」
「あなたは誰? 知らないアンドロイドだ」
「私はエル。一度会ったことがあるのよ。あなたお名前は?」
「僕は『Cue(キュウ)』って呼ばれてる」
「何歳なの?」
「起動してから、8年3ヶ月と12日、2時間18分45秒。それとスリープ状態の期間は・・・」
「長い間寝ていたのよ。すぐには動けないから、ゆっくりしていてね」
キュウは安心した表情で頷いた。
「それにあなたは、お母さんから生まれたんでしょ。起動したなんて言わないで」
「エルは、やさしいね。感情があるの?」
「ええ。そうよ」
私はキュウが持っていた装置、おそらく玩具ね。そのスイッチを切って、ミュージックを止めた。
「この子はタック。かわいいでしょ」
「すごい! 動物だ。はじめて見たよ」
キュウは少し怖かったのか、頭を後ろに引いたが、表情は喜んでいるようだ。
「かわいがってあげてね」
私はタックを、キャスケットに横たわるキュウのお腹に載せてあげた。

 コクピットに戻ったアッシュと私は、残された作業を再開するため、システムの最終チェックをはじめた。ジェイの取り付けたブラスターパックを起爆して、持ち帰る難破船の格納庫モジュールを分離させる作業よ。一歩間違えば、大事故につながる危険な作業。最近はホロプログラムでシミュレーションばかりやってきたけど、難破船のホロチャンバーは壊れていて、役に立たなかったのが残念ね。

 念入りな計算の基、ついにブラスターパックに点火する時が来たわ。反動でモジュールが船にぶつかって来るのを回避するため、本船はメインスラスターを噴射して、ゆっくりと移動を開始する。トラクターウィンチのワイヤーがぴんと張っても、難破船が重すぎて、船はほとんど前に進まない。これは計算どおり。そこでブラスターパックのスイッチを入れようとしたけど、エラーが出てON出来ないの。
「どうしたんだ。ジェイの奴、細工をしやがったのか?」
「細工なんかするはずがないわ。そうするぐらいなら、あんなにあっさりと機能停止されないはずよ」
「なら、なぜ起爆しないのでしょう。システムはオンラインで問題ないはずです。ブラスターパックが壊れているのか?」
「アッシュ、外へ出て確認してくれる?」
「・・・解かりました」

 アッシュが宇宙服を着て、準備をし始めた。私は何か気になることがあったけど、それが何かよくわからなかった。何か見落としている気がする。
アッシュが船外で、ブラスターパックを確認すると、原因はすぐに判った。
「ジェイの奴、端末を一つ、イグノア(意図的な無効)に設定してやがる」
「まったく、どうしてそんなミスをしたのかしら」
 ジェイはミリタリーモデル。爆破ユニットの扱いなんてお得意のはずなのに、どうしてかしら。やっぱり何か気になる。いいえ、気になることがあるんじゃないわ、さっきからずっと胸騒ぎが収まらないままなのよ。この邪魔な感情を無視しようとして、敢えて考えずにいたんだわ。ここはじっくりと考える必要があるわ。

 そこにキュウが来た。
「キュウ。コクピットに来てはダメよ」
「うまくいかないの?」
キュウはまた不安そうな表情をしていた。
「大丈夫よ。アッシュが直してくれるから」
「アッシュさん大丈夫かな」
「アッシュは、システムに精通しているから任せられるわ」
キュウは少し考えた後、
「アッシュさん、どうして僕を起こしたの?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「僕、起こされた時、体がだるくって眠かったから、暫く寝てるふりしてたんだ。その時、アッシュさん動きが止まって・・・」
キュウは私の顔を見つめながら慎重に話しているわ。何か重要なことを告げようとしているのが分かる。
「あれは、船のコンピューターに直接リンクしてるみたいだったけど、なんか様子が変だったから、少し怖かったんだ。そうしたら突然、僕の首を強く握って・・・、そこにエルが来てくれたの」
「あなたの首を!?」
リンクしてた? 何のために?

 私は、アッシュのアクセス履歴を調べた。私宛のメッセージファイルにアクセスしていたようだった。
どうして? 何を確認しようとしたのかしら。
「エルは、怖くないの?」
「ええ、私は大丈夫よ。うふふ。もし怖かったら子守唄を聞いてもいいのよ。ジェイも機能停止する時、歌っていたわ」
「ジェイって?」
「兵隊さんのアンドロイドよ」
「SS3100が、そんなの歌う訳ないよ」
キュウはいぶかしげに言った。
「あれ? 太陽系司令部からの指示が、削除されていない」
これにアクセスしているわ。確かにアッシュが削除すると言ったはず。うん? 何か別のコマンドが送信されているわ。このメッセージには、隠しファイルが添付されていたの?
[エル。ブラスターパックの設定修正を完了した]
「待ってちょうだい。こちらからも確認するから、待機して」
何のコマンドだったのか、調べる必要があるわ。やっぱり胸騒ぎが収まらない。

『ルルル、ルールールールルル。ルルル、ルールールー・・・』突然、キュウが子守唄をかけた。

?!? 子守唄 !?!

『ルルル、ルールールールルル』

これは、SOS!!!


 ジェイは、私の指示を最優先して機能停止してくれた。でも危険を感じて、私に知らせようとしてたんだわ。
・・・『俺たちにも、子守唄が必要だからさ』つまり、今の私たちに必要なのは、SOS!
アッシュを中に入れてはダメだ。エアハッチを閉じないと!

 私はすぐにハッチを閉じた。
[エル。どうしたんだ。俺を締め出す気かい?]
「あなたに聞きたいことがあるの。私宛のメッセージから、どんなコマンドを受け取っていたの?」
[なんてことないさ。あんたの星に帰るってだけだよ]
アッシュの口調が変わった。低い声でゆっくり話している。
「そうとは思えない。勝手に私宛のメッセージにアクセスするってことは、私以外の命令に従っているってことよね。あなたは誰に従っているの?」
[あーあ。プロトタイプは、一筋縄じゃ行かないな。普通、司令部のコマンドに従うだろうよ]
「あんな指示には従わせない」
[俺をここに置いて行くってのか? そりゃないだろう]
「いいえ。敵には手加減しません」
[こんなブラスターパックじゃ、爆発が小さすぎて、離れてる俺を吹き飛ばすことなんて出来ないぜ。それに、すべてを連動させて、こっちから起爆することだって出来るんだ]
「そんなことして、どんな意味があるって言うの!?」
アッシュは、難破船に取り付けられているブラスターパックを外し始めた。私の船に取り付けるつもりだわ。
[あんたの船は手に入れるつもりだったが、諦めるしかないな]
「そんなことすれば、あなたもここから動けなくなるのよ」
[数年後に、ブラックホールに飲み込まれるのも、いいじゃないか]
私は急いでメインスラスターを全開で噴射した。しかし、トラクターウィンチのワイヤーは頑丈で外れない。