第二章 華やぎの街にて
(第一章 あらすじ)
===第一章 あらすじ===
大華王国の貴族(シャトーア)、藤咲(ふじさき)メイシアは、凶賊(ダリジィン)斑目(まだらめ)一族に囚われた父と異母弟を助けるために、斑目一族と敵対している凶賊(ダリジィン)鷹刀(たかとう)一族の屋敷を訪れた。
貴族(シャトーア)の娘とはいえ、彼女が鷹刀一族に差し出せる対価は『彼女自身』。一度は断られたものの、総帥、鷹刀イーレオに気に入られ、家族を救い出すことを約束してもらう。
メイシアの家族を救い出すために、状況を調査したのは、イーレオの末の息子、ルイフォン。彼は《猫(フェレース)》という名を持つクラッカーであった。彼の働きにより、斑目一族がメイシアの家族を狙った背景に、藤咲家のライバルである貴族(シャトーア)、厳月(いわつき)家の存在が判明する。藤咲家と厳月家は、女王陛下の婚礼衣装担当家の座を争い、藤咲家が選ばれたのであった。
厳月家は、斑目一族を使ってメイシアの異母弟を誘拐させ、メイシアの父に婚礼衣装担当家の辞退を迫る。だが、辞退すれば王家の顔に泥を塗ることになり、貴族(シャトーア)の位の剥奪の可能性がある。家門と愛息を天秤に掛けられたメイシアの父に、厳月家は第三の道を示す。メイシアを花嫁として差し出せば、助けるというのだ。つまり、メイシアを人質として、藤咲家への影響力を持つことが厳月家の真の目的であった。
しかし、メイシアの父は、厳月家への返事をする前に、単身で斑目一族の元へ行き、斑目一族に囚えられている。この状況をルイフォンが「おかしい」と言う。斑目一族は、厳月家に雇われたふりをしていただけで、別の目的があったのだと推測する。当事者であるメイシアと話をすり合わせると、謎の女、ホンシュアの存在が浮かび上がった。ホンシュアの言動は、意図的にメイシアを鷹刀一族の元へ送ったとしか思えない。いったい、なんの目的で……?
===登場人物===
鷹刀ルイフォン
凶賊(ダリジィン)鷹刀一族総帥、鷹刀イーレオの末子。十六歳。
母から、《猫(フェレース)》というクラッカーの通称を継いでいる。
端正な顔立ちであるのだが、表情のせいでそうは見えない。
長髪を後ろで一本に編み、毛先を金の鈴と青い飾り紐で留めている。
※「ハッカー」という用語は、「コンピュータ技術に精通した人」の意味であり、悪い意味を持たない。むしろ、尊称として使われていた。
「クラッカー」には悪意を持って他人のコンピュータを攻撃する者を指す。
よって、本作品では、《猫(フェレース)》を「クラッカー」と表記する。
藤咲メイシア
貴族(シャトーア)の娘。十八歳。
箱入り娘らしい無知さと明晰な頭脳を持つ。
白磁の肌、黒絹の髪の美少女。
鷹刀イーレオ
凶賊(ダリジィン)鷹刀一族の総帥。六十五歳。
若作りで洒落者。
鷹刀ミンウェイ
イーレオの孫娘にして、ルイフォンの年上の『姪』。二十代半ばに見える。
鷹刀一族の屋敷を切り盛りしている。
草花に詳しい。
緩やかに波打つ長い髪と、豊満な肉体を持つ絶世の美女。
草薙チャオラウ
イーレオの護衛にして、ルイフォンの武術師範。
===大華王国について===
黒髪黒目の国民の中で、白金の髪、青灰色の瞳を持つ王が治める王国である。
身分制度は、王族(フェイラ)、貴族(シャトーア)、平民(バイスア)、自由民(スーイラ)に分かれている。
また、暴力的な手段によって団結している集団のことを凶賊(ダリジィン)と呼ぶ。彼らは平民(バイスア)や自由民(スーイラ)であるが、貴族(シャトーア)並みの勢力を誇っている。
作品名:第二章 華やぎの街にて 作家名:NaN