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師匠と弟子と 8

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 確かにそうだ。うっかりしていた。俺は自分の事ばかり考えていた。これでは早々に梨奈ちゃんに愛想をつかされるかも知れない。
「今日でも良いよ」
 そう、善は早いほうが良い。とも言う。
「こんな格好で? 今日普段着だし……」
 ああ、またしても失点だ。何を俺は焦っているのだろうか……。
「でもいいか! 普段のわたしを見て貰えれば良い訳だから」
 正直、ウチの母親は今日の梨奈ちゃんを見ても、きっと気に入ると思う。
「じゃあ来る?」
「そうね。行きたいな」
 話は決まった。喫茶店の支払いを済ませて表に出る。すると梨奈ちゃんが腕を組んで来た。ちょっと戸惑う俺に梨奈ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

 駅の改札を抜けて家に向かう道を歩いて行く。梨奈ちゃんは、相変わらず腕を組んでくれている。嬉しいような、正直顔見知りの人に会ったら何と思われるだろうか。なんて考えてしまう。
 俺の実家は駅から六分ほどの距離にあり、交通の便は良い。
「ここだよ。俺の家」
 どこにでも立っている平凡な二階家だった。表札には父親の名前「高梨晋三」の名前が書かれている。ちなみに俺の本名は「高梨信春」と言う。更に梨奈ちゃんの家の名字は「和久井」と言う「和久井梨奈」が彼女の名前だ。師匠の本名は「和久井顕」と言う。だから師匠の同期の師匠達は「アキラちゃん」とか呼んでいる。
「今日から信ちゃんと呼ぼうかな。その方が親しみが湧くでしょう」
 確かに本名に関係した方が何と無く気が楽な気がした。
「そうだね。そっちが良いかな」
「じゃ決まりね」
 嬉しそうな梨奈ちゃんの顔を見ながら玄関の引き戸を開けると、丁度妹が玄関に居た。どうやらこれからバイトに向かう所みたいだ。妹は現在大学三年になった。もう少しすれば就活に忙しくなるだろう。
「あ、お帰り……え、もしかしてお兄ちゃん、その人……」
「あ、妹さんですか? 信春さんと交際しています和久井梨奈と申します」
 梨奈ちゃんは妹に丁寧に頭を下げた。
「あ、わたしは妹の高梨香織と申します」
 妹も頭を下げたので玄関先で二人の女声がお互いに頭を下げる事態になってしまった。
「わたしは出かけなくてはならないのですが、どうぞ上がって下さい」
 妹はそう言って梨奈ちゃんに家に上がるように進めるのだった。
 正直、俺は段々緊張して来るのを感じるのだった。
作品名:師匠と弟子と 8 作家名:まんぼう