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てっしゅう
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「歴女先生教えて~」 第四十二話

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「流れはそうね。簡単には語れないけど、明治の元勲たちは自分たちが起こした維新というクーデターを正当化するために、諸外国へ留学して新しい知識と文化を持ち帰ってきた。国内に残された旧幕府勢力と外国の文化を吸収できなかった軍人たちは当然のように政府と向かい合うことになり、下野して民主主義を謳う反政府活動家となったり、不平分子に推されて政府軍と戦争を起こした。西南の役ね。
国内の争乱を治めて明治政府は強力に体制を整えていった。日清戦争に勝利して浮かれていたところへ、日露戦争が始まり、実際には日本軍は大変な戦争をしていたんだけど、かろうじて勝ったのはロシアに共産革命が起こっていたので兵力を極東地域に集められなかっただけ。アメリカの仲介で1905年9月に締結されたポーツマス条約で講和したんだけど、多大な犠牲を払って勝利したにも関わらず南樺太の領土と南満州の権益だけしか得られなかったから国民には不満の声があったのよね。それは大勝利と謳ってきた政府の意図的な誤った広報に対する不満でもあったの」

「国が国民に正しく戦争の報告をしなかったということが後に災いするのですね」

「渡辺くん、そうよ。勝った、勝った、大勝利、大勝利と言い続けていると、今回は劣勢とか負けたとは言えなくなってしまうの。次第に国民には真実というものが見えなくなり、後に国際連盟を脱退するような暴挙に出てしまうことに繋がるの」

「松岡洋右(ようすけ)が国民の声に押されて脱退を決意したというのは避けられない状況だったからですね?」

「高木くん、その通りだと先生も考えるわ。彼は断固として自分の命に代えても脱退を阻止すべきだった。リットン報告(国際連盟日支紛争調査委員会での結果)でも満州の権益は保証されていたのに、冷静な判断が出来なかったということが日本の未来を残酷なものにしたから、その意味では松岡は政治家としての素質に欠けたわね」

「日露戦争に多くの犠牲者を出して、手に入れた満州を権益だけではなく自国領地と考えることは勝者として当然の権利に思えますが」

「高木くんのように考えることが当時の軍部の多数派だった。というより日本国民に対して軍部の威勢を見せつけるために、そうせざるを得なかったと言った方が正しいのかも知れないわね。一年半に及ぶロシアとの戦いで病死も含めておよそ十万の慰霊に対して申し訳が出来ないという思いね」

*日露戦争:1904(明治37年)二月八日~1905(明治38年)九月五日まで大日本帝国とロシア帝国が朝鮮半島と南満州及び日本海を主戦場として発生した戦争。ポーツマツ講和条約で日本は南樺太が日本領となり、ロシアの租借地があった関東州については日本が租借権を得て、関東都督府が設置された(ウキペディアから)