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てっしゅう
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「歴女先生教えて~」 第四十二話

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日本が太平洋戦争に突入したのは国家神道の精神がそうさせたのではないか?との質問に美穂は答える。

「渡辺くんが言ったことへの答えは、それもある、ということにするわ。
少し回り道するけど知っていて欲しいことがあるので話すわ。国家神道を指導する上で困ったことがあったの。それは神仏混淆になっていたことよ。国の宗教として神道を掲げるには日本固有のものでなければ外国に強く示せないから、他所の国から入って来た仏教を神道から分離しようと、神仏分離へと方針を変換した。結果、仏像をご神体として崇めることは禁止された。経典や仏具も廃棄され、様々な仏事を行うことも禁じられたの」

「廃仏毀釈ですね。お寺や仏像が焼かれたと聞きました。明治政府には薩摩藩の出身者が多かったので、鹿児島県ではほとんどの寺院が神式に変えられたようです」

「高木くんはよく知っているね。その通りよ。仏教を国家神道と分離したけど、江戸時代から続く儒教、特に朱子学は入りこんでいるの。家康がこの朱子学を官学としたのは、信長が信頼していた家臣の光秀に殺されたことから、いつ自分も同じ目に遭わされるかも知れないとの危惧からなの。徳川の世を盤石なものにするためには絶対的な忠誠心を大名や諸将に植え込むことが必要だという思いから、忠義を武士の基本精神とした朱子学を導入した。
皮肉なことに朱子学で言う忠義を尽くすべき君主は王者だということから、幕末では豊臣家を滅ぼして天下を治めた徳川家ではなく、神から日本の統治を任された天皇家こそが忠義を尽くすべき王者なんだということになっていったのね」

「つまり覇者ではなく、徳を持った本当の王者は天皇である、と教えたのですね」

「渡辺くん、そういうこと」

「では、なぜ徳のある天皇が戦争を止められなかったのでしょう?元帥である天皇は開戦も停戦も決定できたはずですが」

「うん、大きな疑問よね。今の天皇は象徴だけど、明治22年2月11日に公布された大日本帝国憲法には、その第一条に万世一系の天皇これを統治す、そして第四条に国の元首にして統治権を総攬しこの憲法の条規に依り之を行うと書かれているから、すべての決定権は天皇にあった。しかし、明治の政治家たちは再び幕藩政権のように軍の力を政治利用されないために、政党や派閥の拡大に軍が利用されないために統帥権の独立を図った。後に統帥権干犯として天皇の意思に背くことを許さない風潮を作り、軍部が暴走してゆくようになったことは太平洋戦争の敗戦の原因ともなったわね」

「先生、軍部が勝手に暴走して天皇という名のもとに戦争を正当化したと言う事ですか?」