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ヒトサシユビの森 5.ヒトサシユビ

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「ごめんね、いぶき。もう二度とあなたの手を離さない」
かざねはいぶきの小さな手を握りしめた。するといぶきは
「ママ」と言って左手で右手の包帯をほどき始めた。
「いぶき、だめ。お医者さんに診てもらわないと」
いぶきは首を横に振って、さらに包帯を外し続けた。
かざねは目を背けたかったが、いぶきのすることを信じていぶきの手に視線を注いだ。
いぶきは包帯をすべて外し、最後のガーゼを剥ぎとった。
するとかざねが想像していたことと違って、いぶきの右手には指が5本とも揃っていた。
驚いたかざねはいぶきの右手をとって、じっと眺めた。
皆、生まれたてのようなきれいな指だった。
「いぶき・・・」
いぶきはかざねの目をじっと見つめた。そしてきれいな右手の人差し指を一本立てた。
「どうしたの?」
かざねは不思議そうにいぶきを見た。
いぶきは人差し指を立てたまま夜空を見あげた。
黒煙の霞が晴れ、いつしか上空は数えきれない無数の星々が煌めく美しい星空になっていた。いぶきは星空に向けてゆっくりと人差し指を突きあげた。
その指はまるで、どこかの星を指さしているかのようだった。
かざねは星空を見あげて言った。
「いぶきの大好きなヒーローね」
いぶきは、ニコっと笑った。
いぶきの人差し指は夜空の星に向かって、高く、高く・・・。