ヒトサシユビの森 5.ヒトサシユビ
5.ヒトサシユビ
溝端雪乃の容体が急変した。雪乃は目覚めることなく、死期を迎えようとしていた。
「脈拍、呼吸いずれも低下しています」
「まずいな。ドブタミン2単位投与。酸素濃度をあげて対応しよう」
主治医はデータの数値に目を通し、看護師長に指示を出した。
いつも雪乃の傍にいたかざねのことを思いだし、主治医は
「娘さんは?」
と看護師長に尋ねた。
「娘さんは、警察に・・・」
「警察? かまわん。すぐ連絡してくれ」
「警察に逮捕されてるんです」
「実の母親が危篤なんだ。警察に事情を説明してすぐ来てもらいなさい」
作品名:ヒトサシユビの森 5.ヒトサシユビ 作家名:JAY-TA