ありふれた恋の物語
後になって聞いた話だが、瑞樹は俺が手術を受けている隣で息を引き取ったそうだ。
まるで、俺に腎臓を渡すまで待っていたようだと思った。
俺は別に彼女に特別な感情を抱いていたわけじゃない。
友人として彼女のことが…瑞樹のことが好きだった。
ただ、彼女の眩しい笑顔には何度も救われたと思っている。
病院を退院した後、俺は瑞樹の家族の元を一度だけ尋ねた。
彼女は家族に対して臓器提供の話はしていなかったそうだ。
俺が彼女の臓器をもらったと言うと、彼女の家族は驚きながらも「瑞樹の分まで生きて欲しい」と言った。
俺はそれにしっかりと頷いた。