Two Pair + One
お題に沿って書いた作品です、お題は『パズル』『氷』『海辺の小屋』、『負けるな! ライダー!』と同時期に書いたものです。
『パズル』と言うお題を見た時、最初に頭に浮かんだのが、『パズルそのものをノベルに出来ないか?』ということ。
しかし、やってみるとあまり上手くは行かないもので……パズルを複雑にしすぎると退屈だし、簡単過ぎても面白みがないんですね……この作品でも少し簡単過ぎて、ぎりぎりパズルと呼べるかどうか……しかし、関連する人物を一人増やすだけでいきなり難しくなって、作品も長くなるのでここらで妥協しました。
ちょっと中途半端な作品になってしまいましたが、せっかく書いたのでお目汚しにでも……。
【 Two Pair + One 】
「ハロー、ビルかい?……デヴィッドだ」
「やあ、久しぶりだな、なんだい?」
「今、海辺の別荘に来ているんだが、凄いんだ」
「なにが?」
「流氷さ、幻想的でロマンチックだぜ、北極旅行の気分が楽しめる」
「なるほど、今年は寒波が来ているからな、そいつは綺麗だろうな」
「ああ、ぜひ君にも見せたいと思って電話したんだ」
「嬉しいね、今夜はちょっと用事があるんだが、明日の朝出るよ、昼前には着ける」
「せっかくだから流氷クルーズをやって、船上ピクニックとしゃれ込もうと思うんだが」
「そうか、それならなるべく早めに出て、10時頃には着くようにするよ」
「そうしてくれ、モニカの都合は聞かなくて良いのか?」
「ああ、大丈夫、どのみち明日は映画を見に行く予定だったんだ、流氷クルーズと聞けば飛びつくさ、僕もメロドラマを見るより余程良い」
「そうか、じゃ、明日楽しみにしてる」
「こっちこそ、誘ってくれてありがとう……ソックスも連れて行くことになるが……」
「ああ、構わないよ」
ソックスと言うのはモニカが可愛がっているドーベルマン、足先だけが白いのでソックスと呼ばれている、そして、はっきり言ってモニカにしか懐いていない、主人の配偶者たるビルでさえ手を焼くのだ・・・。
まあ、モニカさえいれば問題ないと言えばそれまでだが、本音を言えば余り歓迎したくはない、しかしビルとモニカを誘えばもれなく付いて来るのは承知の上なので仕方がない。
デヴィッドとビルは親友同士、どちらも裕福なセレブでもある、そして、二人とも名うてのプレーボーイ。
デヴィッドの妻、ヴィクトリアはファッションモデルと見まがうようなスリム美女。
ビルの妻、モニカはグラビアモデルと見まがうようなグラマラス美女。
そして、かつては恋多き女性として名をはせた二人でもある。
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「とても綺麗」
「ちょっと寒いのが玉に瑕だけどね」
「ヴィクトリア、それは仕方がないわ、寒くなければ流氷なんて見られないでしょう?」
「そうね……でもミニスカートは失敗だったわ」
美脚自慢のヴィクトリアはミニスカートが普段着、今日もTPOをわきまえずにミニスカートで来てしまったのだ。
クルージングと言っても夏の海を爽快に飛ばすのとは違い、流氷の中をゆっくりと進む。
しかし、様々に表情を変える流氷は四人を全く飽きさせない。
一頭の感想は英語を喋らないのでわからないが……。
「流氷に乾杯!」
ビルが持参した高級ワインとチーズ、デヴィッドが用意したステーキサンドと温かいスープ、そしてケータリングさせたオードブルの大皿で船上ピクニックの始まりだ。
デヴィッドとビルは古くからの友人同士だが、しばしば夫婦ぐるみで遊んでいるので、ヴィクトリアとモニカもとても仲が良い。
そして……。
デヴィッドはスレンダーなヴィクトリアと対照的にグラマラスなモニカに興味津々。
ビルもグラマラスなモニカと対照的にスレンダーなヴィクトリアに興味津々。
そして、ヴィクトリアは自分にない肉感的な魅力に溢れたモニカを羨み、モニカもスレンダーなヴィクトリアを羨んでいるのだ。
船上ピクニックを楽しんだ後、大きな流氷に上陸したり、釣り糸を垂れたりして、四人は休日を満喫した。
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「まずいな……」
さあ、そろそろ帰ろうか、となり、クルーザーのエンジンをかけたデヴィッドが呟く。
「どうした?」
「発進できない……氷に囲まれてしまって身動きが取れないんだ」
「閉じ込められたって訳か……救援は?」
「要請したが、緊急性が薄いと判断されてるみたいだ、沖合いに閉じ込められた漁船が沢山あるらしい、救援は明日になると……」
「え~っ? ここに泊まる事になるの? 凍え死ぬわ」
「いや、エンジンはかかるし、燃料も充分だから暖房は問題ない」
「でもベッドもないのよ」
「一晩だけだよ」
「でも、あたしは嫌よ!」
ヴィクトリアの我侭はいつもの事……もっとも、これがデビッドのクルーザーだから口にしないだけで、モニカも似たようなもの、このまま船中泊と言う事になれば、帰りの道すがら、ビルはさんざん文句を聞かされることになるのだ。
それを想像したのか、ビルが提案をして来た。
「幸い、岸までは300mもないだろう? この小島の裏側に出れば君の海辺の別荘は見えるんじゃないか?」
「ああ、そうだ」
「ゴムボートか何か備えていないのか?」
「あるにはあるが、二人乗りだ」
「ピストン輸送しても大して時間はかからないだろう?」
「それもそうだな、そうすることにしようか……」
ヴィクトリアとモニカが『そうよねぇ、考えられないわよねぇ』などと言い合っている間に、ビルがデヴィッドをデッキに誘い出す。
「ピストン輸送するのはいいが、君がモニカと二人っきりになるのはちょっと心配なんだ」
「随分と信用がないんだな」
「いや、君がどうこうじゃなく、モニカはいい男と見ると見境がないから……」
「ははは、実は僕も心配なんだ、ヴィクトリアもそうだからな、それに正直言ってモニカにぐっと迫られたら理性的でいられる自信はないよ」
「それは僕も同じだ、ヴィクトリアに迫られたらタガが外れそうだ」
「要するに僕とモニカ、君とヴィクトリアが別荘やボートで二人きりにならなければ良いんだろう?」
「それと、ソックスは常にモニカと一緒でないと……」
「わかってるさ、上手くやるよ、心配するな、それよりゴムボートを出すのを手伝ってくれ」
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作者注
ここからパズルです(笑)
命題はクルーザーの四人と一頭を、二人乗りのゴムボート一艘で海辺の別荘に移動させる事。
条件は二つ。
ビルとヴィクトリア、デヴィッドとモニカを、クルーザーでも、ゴムボートでも、海辺の別荘でも二人きりにしないこと。
ソックスは常にモニカと一緒でなければならず、大型犬なのでゴムボートには二人と一頭が一緒に乗る事は出来ない。
さて、デヴィッドの解は……。
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「まずはヴィクトリア、君がボートに乗って、僕が漕ぐから……ビルとモニカはしばらくクルーザーで待っていてくれ、ソックスも一緒に」
「モニカ、ごめんね、でも暖房のスイッチを入れておくから」
作品名:Two Pair + One 作家名:ST