われらの! ライダー!(第五部)
レディ9は体を振って空中ブランコの要領でトンビ男の背中に飛び移った。
「お、降りろ! 俺は馬じゃないぞ!」
「そんなの見ればわかるわよ、でもさすがね、重いとか言いながら随分高くまで飛んだのね」
「余裕があるのも今のうちだけだ、きりもみ急降下で振り落としてやる!」
「あら、それは大変、だったら……」
「わ、何をする! 止めろ~っ!」
トンビ男の背に腹ばいになったレディ9が、両腕で両方の翼をかんぬきに極めてしまったのだ、これでは翼の自由が効かない、しかも既にきりもみ状態には入ってしまっているのだ!
「よし! 任せろ!」
地上ではマッスルが叫んでいる、マッスルとレディ9の間でだけ通じる、通称『愛のテレパシー』、レディ9は自分がトンビ男から離れて飛び降りるタイミングをマッスルに伝えていたのだ。
「うわ~~~~~っ! 落ちる!」
「あなたっ!」
「おうっ!」
ガシッ!
グシャッ!
地上まであと三メートルに迫るタイミングで、レディ9はトンビ男から離れ、前方一回転を決めながらマッスルの腕の中へ。
そして、トンビ男は体勢を立て直す間もなく、そのまま地面に激突した……。
「う~ん、やっぱりお姫様抱っこは素敵だわ♡」
「こいつぅ、ハラハラさせやがって……だけどやったな! 二人でトンビ男を仕留めたぜ」
「よう、お二人さん、仲の良いことで」
「だが、どうして変身を?」
「ん? そこに倒れているのは怪人か?」
そこへ帰って来たのは、おやっさん、一文字隼人、結城丈二の三人だ。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「そうか、我々のいない間にショッカーの襲撃が……」
「おやっさん……」
「ああ、情報は正しかったようだな」
「情報? 何のことですか?」
きょとんとする剛と志のぶ、立花のおやっさんは全てを説明した。
「知り合いの警察署長からの情報でな、怪しい人物が立花レーシングの周りを嗅ぎまわっているらしいと言うんだ、もしやショッカーではないかと思っていたが、悪い予感が当たったようだ」
「そうか……トンビ男が襲ってきたと言う事は、このアジトがばれたということか……」
「そういうことになるな、早めに手を打っておいて良かったよ」
「手を打つとは?」
「引越しだよ」
「引越し?」
「ああ、どのみち若者のバイク離れが進んで来ていて、レーシングチームの運営もきつかったんでね、商売替えをしようと思ってな、今日は物件を見に行って来たんだよ」
「商売替えですか、今度は何を?」
「『喫茶・アミーゴ』それが新しいライダーチームのアジトだ、さあ、早速引越しの準備にかかろうじゃないか!」
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
「なんだか、名残惜しいな……」
「ああ、そうだな……」
「俺にとっちゃ、初めての家らしい家でもあったなぁ」
「私にも……」
引越しの荷物をまとめ終えたライダーチームは、いつも集っていたリビングを感慨深げに見回した。
「どうした! 行くぞ!」
おやっさんが玄関先で大きな声を上げる。
「おやっさん、なんだか張り切ってるな」
剛がそう呟くと、隼人と丈二は小さく首を振った。
「いや、俺達以上におやっさんは名残惜しい筈さ」
「ああ、カラ元気ってやつだな、ああして陽気に振舞っていないと辛いんだろう」
「そうでしょうね……」
「なるほど、俺はそう言うところがガサツだな」
志のぶと剛もおやっさんの心の内を察して、ちょっとセンチになってしまうが……。
「でも、仲間がいなくなるわけじゃないんですもの、カラ元気でもなんでも、おやっさんに沈んだ顔なんか見せちゃいけないわね」
「「「おう!」」」
「お~い、まだか? ぐずぐずしていると置いて行くぞ」
ライダーチームの四人は顔を見合わせて笑った。
「「「「おやっさん、今行くよ!」」」」
(引っ越せ! ライダー! 終 Good-nye dNoVeLs , Hello Noverist )
作品名:われらの! ライダー!(第五部) 作家名:ST